観光業は「光を観せる」仕事 「イルカと会話できるガイド」がコロナ禍で気付いたこと

6月中旬ハワイ島。久しぶりに会うイルカたち(写真提供/Dolphin Eyes)

 年間330日イルカと泳ぐハワイ島在住のドルフィンガイド&写真家のダイスケさん(Ronald Daisuke Jourden)。海の中にもソーシャルディスタンスはあると感じられる、人と動物との共存を語った「第1回記事」

 1986年ハワイ生まれ大阪育ち。ハーフで生まれ物心が付いた時からイルカが大好き。紆余曲折あり、2012年ハワイ島へ。夢を実現し、ドルフィンガイドになる(第2回記事)。

 アロハコナツアーズで活躍するも現在、ツアーは停止中。新型コロナの影響で、観光業は大打撃。仕事もストップ、収入もゼロ。3月家を買ったばかり、子どもは生後9カ月。なのに、笑顔でいられるのはなぜ?

 海とイルカとともに生きるダイスケさんが、ロックダウンで海に入れない日々の中で気付いたことと、イルカから受け取ったメッセージとは?(3回連載の最終回)

アフターコロナ、人も自然もどう変わるのか(写真提供/Dolphin Eyes)
アフターコロナ、人も自然もどう変わるのか(写真提供/Dolphin Eyes)

―― ダイスケさんは、イルカのどういうところが好きなんですか。

ダイスケ ありのままの姿で生きているところかな。

―― 野生のそのままの姿。イルカと会話できるダイスケさんに、「イルカとどうやって仲良くなるの?」と聞こうとしたけれど、結局は人間と一緒ということですよね。

ダイスケ そうですね。

―― イルカに向かっていって、それで嫌われてしまうこともあるし。そもそも会えないこともあるでしょう。でもダイスケさんはよく会える。何が違うんだろう。

ダイスケ 僕でも避けられる日はあるんです。イルカちゃんの機嫌もあるし。

―― ダイスケさんなりのコミュニケーションの取り方があるんですよね。

ダイスケ はい。それは、ヨガを取り入れて、息を長く止める。横隔膜のストレッチャートレーニングだったり、一番はとにかくマインド。自分の気持ちを無の状態にしておくのが一番イルカちゃんと深くつながれるときなんだと思う。

ワクワクしていると、その波動でイルカたちが寄ってくる(6月中旬)(写真提供/Dolphin Eyes)
ワクワクしていると、その波動でイルカたちが寄ってくる(6月中旬)(写真提供/Dolphin Eyes)

―― それは経験でそう感じるんですか?

ダイスケ はい、経験で。それとハワイ島のイルカちゃんには年間300日以上も会えているので、僕はおはようという感じでリラックスした状態で接していられるんですけれども。例えば、僕が北極の海でシャチと泳ぎに行ったときは、興奮していて、やっぱりそれができていなかった。お客さまの気分ってこれなんだとそのとき思ったんです。だから、4日目、5日目、シャチと泳ぐときは僕も結構リラックスできていて、僕に寄ってきてくれたので、本当に心をスキャニングしてくる生き物なんだなと。エコロケーションといってエコー検査を受けるような感じで心を読まれるので、だから、ワクワクしている人に寄ってきやすい。

―― 怖がっていたり、妙にハイテンションだったら、向こうも警戒するということ?

ダイスケ そうですね。こっちが空回りしているとどうしても。だから人間関係と似ていると僕はすごく思う。お客さまをホテルでピックアップしたときに、「おはようございます」と言ってあいさつをした時点で、ああと思うこともあるし、大丈夫だと思うこともある。

―― 何かそういう説明は潜る前にするんですか。イルカ側の立場に立って。

ダイスケ もちろん。触らないなどの注意事項を言って、このお客さまたちには通じると思ったらちょっとレベルをアップしていって、もっと詳しい話をします。でも頑固な人もいます。一番言うことを聞いてくれないのが海に慣れている人で。

―― 自信があるから。でも海は毎日入っていても違うということですよね。イルカの機嫌も違うし、海のコンディションも違うし。

ロックダウンの間に確実に海は以前よりキレイになった(6月中旬)(写真提供/Dolphin Eyes)
ロックダウンの間に確実に海は以前よりキレイになった(6月中旬)(写真提供/Dolphin Eyes)

プライドを手放したほうがいいドルフィンスイムができる

ダイスケ はい。実は、本当なら今日からバハマに行く予定だったんです。でも、コロナで行けなくなった。僕はバハマのイルカちゃんとはまだ泳いだことがないから、彼らのルールってあるわけじゃないですか。その海のそのツアーのルールがあるわけですから、そこにはちゃんと従っていかないとダメなのかなと。そこは、プライドを手放したほうがやっぱりいいドルフィンスイムはできると思っているんですけれども。

―― そうですね。長年の夢で、やっと休みが取れて、1週間しかハワイ島にいられないとなったときに、もう今日しかない、この時間しかないとなったら、なんとしてでもイルカに会いたいと、天候がイマイチでも体調が悪くても無理しちゃったりするのかも。

ダイスケ 野生の生き物だから本当に会えない日もあるし、すごくいい日もあるし、今日は大変だったと心の中で思う日もあるし。逆にものすごく大当たりという日で、全てパーフェクトというのは年に2~3日あります。

―― そのパーフェクトな日というのは、どういう感じなんですか。

ダイスケ 例えば、参加者が8人います。海のコンディションが最高。天気が晴れていて海が穏やかで風がない。べたなぎの状態になって、最高です。それで、イルカの数が多くて、機嫌がいい。参加者の8人の雰囲気がすごくいい。

―― 仲がいい感じ。

ダイスケ そうです。

―― 全ての条件が、天候、自然もイルカのコンディションも人間もみんないいようになったときに、イルカも近くに寄ってくるのかもしれませんね。

ダイスケ 多分自然に対してリスペクトしている人が集まったりするとね。今は、素晴らしいものを見ても満足できない人もいると思うので。

イルカたちが機嫌のいいときは動きが違う(写真提供/Dolphin Eyes)
イルカたちが機嫌のいいときは動きが違う(写真提供/Dolphin Eyes)

―― イルカのベストコンディションというのは。

ダイスケ 彼らが夜の間にたくさんご飯を食べれたときはお腹いっぱいになってすごく機嫌がいいときがある。

―― それは泳ぎでわかるんですか?

ダイスケ はい。イルカ同士で集まって団子になったり。あと、イルカがお客さまを避けずにいるとき。僕がガイドするときは、イルカが来る方角を読んで先回りしてお客さまを誘導していく形なんですけれども、避けるときは潜って深いところに行くか、ポーズを変えて遠くに行ってしまうんですけれども、向かってくる感じでどんどん来るんです。

―― 積極的にアクティブになるわけですね。

ダイスケ そうです。でも寝始めると、深く潜っている時間が長くなってくるので、起きているタイミングでずっと泳いでくれると機嫌がいいですね。

毎日のように海に入っていたのに、2カ月入れなくなって

―― コロナの影響で、2カ月間海に全然入れなかったんですよね。ステイホームの間はどういう生活をしていたんですか?

ダイスケ 最初の3~4週間は本当に不安になった。ツアーがなくなって、「生活もあるし、どうなるのかな」と思ったけれども、今は落ち着いています。一番の理由は奥さんがいるし、子どもがいるから。

―― 2人の支えがあるから。

ダイスケ はい。守らなきゃというプレッシャーもあるんだけれども。子どもはまだ生後9カ月ですし。ずっとぶっ飛ばして仕事をしていて、日本に帰ったときも写真展やイベントで全国を飛び回っていたので、家族の時間があるようであまりなかった。

―― ドルフィンガイド以外にも写真家としても活動もあるしで、忙しかった。

ダイスケ そうですね。だから今、同じテーブルでゆっくりご飯を食べられることとか、子どもとお風呂に入ることとか、散歩に行くこととか。買い物もそうだし、全部がすごく大切な時間です。

将来、コロナがあったから今の自分がいると思える自信がある

―― 家族と一緒に過ごせる貴重な時間になったんですね。

ダイスケ 今になって思うことなんだけれども、過去の大変なときは、いっぱいいっぱいになって周りが見えなかった。だけど、例えば、2025年になったときに、2020年のコロナがあったから今の自分がいるんだと思える自信があるんです。

―― ハワイ島のような観光地は、観光客が来ないと生きていけなくなるじゃないですか。それこそ、収入源がなくなってしまう。周りのガイドの人もみんな仕事がない。そういうときに、ダイスケさんはどうやって、不安からプラスになれたの?

ダイスケ プライドのある人や頑固な人はそこに執着すると思うんですけれども、自分は、生活するために必要な金額はだいたいわかっているから、それを稼ぐための方法はガイドにこだわらなくても職を選ばなければある。例えば、ホームセンターで働くとか、何でも。

―― 今までやってきたことに固執せずに。

ダイスケ イルカも大事だけれども、家族が一番大事なんだなと思う。もちろん、イルカも大事なんですよ。変な意味で言っているわけではなくて。コロナの前の自分は、ちょっと浮かれていたのかなと思うから。多分てんぐになっていたんだと本当に思うんです。

美しいハワイ島の自然をこれからも守りたい(写真提供/Dolphin Eyes)
美しいハワイ島の自然をこれからも守りたい(写真提供/Dolphin Eyes)

―― 夢もかなって、多くの人に求められて、忙しくしていて。それで、今までは世界中を旅したり、行きたいところに行けたけれども。仕事的には、お金もすごく回っていたの?

ダイスケ 自分自身の人生を楽しむための金額も入っていました。

―― 家も建てたばかりなんですよね?

ダイスケ 家は築30年のコンドミニアムを買ったんです。

―― いつぐらいに?

ダイスケ 今年です。コロナの前に。今年の始めに、当時住んでいたところは「小さいよね」と奥さんと話していて、ハワイ島の物価がどんどん上がっていて、僕らが住んでいるエリアに新しくモールができることも分かった。そうなると、さらに家賃も上がるので「買ってもいいんじゃないか」となった。アメリカは家の価値がなかなか下がらないので、10年住んで売っても同じ額で売れたらいいかなとか。それで、3月4日に買いました。

家を買った後に、まさかのロックダウン

―― 超ギリギリじゃない?

ダイスケ はい。その2週間後にロックダウンで仕事がなくなったんです。だから「どうしよう」と。

―― そうよね。でも、「家も買ったし、赤ちゃんもいるし、仕事どうしよう」と思って、ショックを受ける人もいるでしょう。

ダイスケ そうですね。僕も最初は「どうしよう」と焦っていました。でも、うちの奥さんが「なるようにしかならないよ」というタイプの人なので。

―― よかったあ。助かりますね。でも、今、収入は全然ないの?

ダイスケ はい、ゼロです。最初の1カ月半は政府がシャットダウンしていたので、休業手当の申請もパンクしていた。だから、政府からのお金も入らない。

―― アメリカは結構そういうのは早くて、パッと保証してくれるんじゃないの? そんなことはない?

ダイスケ この間政府が出した1,200ドル小切手が届いたぐらいです。1,200ドル届いても、1カ月も持たないです。アメリカ本土はもっと物価が安いからいいけれども、ハワイでは難しいですね。

次にツアーができるようになるのはいつなのか(写真提供/Dolphin Eyes)
次にツアーができるようになるのはいつなのか(写真提供/Dolphin Eyes)

―― ダイスケさんの感覚だと、前みたいなツアーができるのはどれぐらい先だと思う?

ダイスケ 早くて9月からかなと思っています。

―― それまではどうするつもりなの?

ダイスケ それまでは、家をきれいにする。家を塗装したりとか。それから、家族の時間もすごく楽しませてもらっているし、次の写真集のプロジェクトとか、DVD第2弾とかも今、作っています。

「家にいて仕事しなくていいよ」と言ったけど、家事のほうが大変だった

―― 今までは、イルカが好きで、仕事が好きで、とやっていた。家族ももちろん大事だろうけれども、なかなか時間がなかった。一緒に住んでみて発見はあった?

ダイスケ ありますよ。今まで、うちの奥さんには「専業主婦になって、家のことをちゃんとしておいてくれれば、仕事はしなくていいからね」と言っていたんだけれども、仕事より子育てや家事をやるほうが大変だなというのが痛感できた。奥さんに対しての感謝の気持ちがすごく湧いた。

―― 「専業主婦で家にいて仕事しなくていいよ」と言ったけれども、家事のほうが本当は大変だったんですね。

ダイスケ 大変です。掃除とか洗濯とかやって、それプラス赤ちゃんの面倒を見る。すごく大変なことだなと思った。

世界中を旅してきたダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)
世界中を旅してきたダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)

3カ月に1回はハワイを出ようと思って

―― ダイスケさんはイルカだけじゃなくて、オーロラを見に行ったり、結構あちこち行っているんですね。

ダイスケ はい。行っています。エジプトとかにも。

―― 1年のうちで何カ所ぐらい行っていたの?

ダイスケ 3カ月に1回はハワイから出ようと思ったんですよ。

―― それはどうして?

ダイスケ ハワイ島にいると小さくなっちゃうから。外に出ないと、と。ずっと日本にいるのもよくないと思うし。例えば、東京だけにいると小さくなる。だから、年に4回はハワイ島から出て、そのうちの2回は日本へ。1回は行ったことのない国へ。1回はハワイ諸島へ。違う島を見るという感じです。

人との出会いも自然との出会いのタイミングも全て意味がある

―― 海の別の生態を見に行くこともあれば、陸の景色を見たり、実家に帰ったりと意識的にしているんですね。ダイスケさんは直感的に生きているだけじゃなくて、ちゃんと計画もしているんですね。

ダイスケ すごく計画しています。お客さまによって、イルカに会えるときと会えないときがあると思うけれども、それには縁があるし、意味があると思うんです。僕がオーロラを見に行って、見られたのも、僕にとって必要なことだったんだと。そう思うと、過去のことも、あれがなかったら今はなかったと思えるようなことがある。

―― 運命というか、タイミングという、巡り合わせ。

ダイスケ はい。人との出会いも自然との出会いも、全部意味があって起きている。そういう根本的なことは理解できているので、コロナが起きても、今仕事がなくても、落ち着いていられる。そこまでの気持ちのない人はハワイ島から移住したり、仕事を辞めたり、ツアーをたたんだりしている。その選択もタイミングも地球が起こしているんだとさえ思えるから。

「もし、すぐにハワイ島に来れなくてもイルカで癒やされてもらいたい」と(写真提供/Dolphin Eyes)
「もし、すぐにハワイ島に来れなくてもイルカで癒やされてもらいたい」と(写真提供/Dolphin Eyes)

―― ダイスケさん自身は、もし、9月ぐらいからツアーを再開したらガイドのしかたが変わると思う?

ダイスケ 変わる、変わる。

―― どういう感じになるかな。

ダイスケ 人の接し方もそうだし、全てにもっと感謝できるようになると思う。今、奥さんにも感謝できている。今まで当たり前のようにイルカと泳いで、仕事ができていたことが、今できなくなっている。だから、またできるとなったら、それだけでもすごく感謝できる。

―― そうですね。奥さんの支えがあって、その仕事もできていたわけだし。

ダイスケ そう。だから、仕事、頑張ります。エネルギーを爆発させます(笑)。

―― 普通、ガイドをしている人は、「ぜひ、ハワイ島に来てください」と言うんだけれども、ダイスケさんは、「ハワイに来られない人もいるかもしれない。だから、来られない人のためにも写真や動画でイルカのことを伝えていきたい」と言っているでしょう。

ダイスケ はい、そうですね。

―― やっぱり、誰もがハワイ島に行けるわけではない。それこそ、一生に一度行けるかどうか。コロナのことだけではなく、お金もかかるし、休みも取らないといけないし。

ダイスケ でも、そういう考え方でずっといたら、本当にいつまでたっても来られない。健康な人やお金と時間に余裕のある人だけがハワイ島に来られるわけじゃない。だから、踏み出す勇気も一つは持ってもらえれば。もっともっと喜んでもらいたいから。

ダイスケさんの写真集『In Between Dreams』 (撮影/佐藤智子)
ダイスケさんの写真集『In Between Dreams』 (撮影/佐藤智子)

―― 写真集に載っているメッセージは、イルカからインスパイアされたものですか。

ダイスケ はい。それと、自分の過去を見つめて大変だったときのことを思って、今は自分の中で問題解決できていることとか。

―― 乗り越えられたことを。

ダイスケ いじめられていたときのダイスケに、今の自分ならどう声を掛けるかなとか。そのメッセージに合う写真を入れています。

―― 写真集の中の言葉で「夢」の次に多かった言葉が「笑顔」でした。ダイスケさんは笑顔がすごく素敵じゃないですか。

ダイスケ いや、いや。

―― それは自然に出ていることだと思うけれども、心掛けてもいることですか。

ダイスケ 何て言うのかな。本当に大変だった時期があって、周りを見てもうまくいってない人をすごく見させてもらったつもりなんですね。みんな笑ってないんですよ。ハワイ島に来てガイドをしているうちに、「この人のバイブス、面白いな」「この人、落ち着きあるな」と思う人は、みんな笑顔です。

いつも笑顔あふれるダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)
いつも笑顔あふれるダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)

イルカは笑顔の人のところに寄ってくる

ダイスケ イルカと接してあいさつするときに、「○の顔」の人と「×の顔」の人がいると、僕はよく例えるんですけれども。普段から笑っている人はニコッとしていて口角が上がっているから、つなげると「○」になる。「×」の人は目がツンとして口が「への字」になっているからつなげると「×」になる。イルカは「○の顔」か「×の顔」か、どちらに寄ってくるかなと思って見ると「○の顔」だし、僕もムスッとしてガイドしているよりも笑顔のほうが寄ってきやすいと思います。笑顔には福が来るかなと思う。

―― 人間と一緒ですね。イルカと会いたい、好かれたいと思ったら、ニッコリしているほうがイルカもその波動を感じて寄ってくる。

ダイスケ 泳げる、泳げないは関係ないんですよ。その人の波動だから。

イルカの正面向きはなかなかない写真。ダイスケさんだからこそ撮れた1枚(6月中旬)(写真提供/Dolphin Eyes)
イルカの正面向きはなかなかない写真。ダイスケさんだからこそ撮れた1枚(6月中旬)(写真提供/Dolphin Eyes)

―― お客さんが1回のドルフィンスイムでもすごく変わるわけだから、ダイスケさんのように何度もイルカと泳いでいる場合、どういう変化がありました?

ダイスケ すごく自信が付きましたね。

―― それはどういう意味で。

ダイスケ これだけは誰にも負けないというのが僕の場合はイルカちゃんだったので、それまでは医療関係の仕事をしていたので、あまり自信がなくて。だからやっぱり自分の好きなものと触れ合って、ある程度周りに評価をされたり、写真集のように形になると、自分の作品をみんなが見てくれて、言葉を受け取ってくれて、それで元気になってくれたかと思うと、ちょっとずつ自信が付いてきましたね。

―― イルカちゃんと接することでも。

ダイスケ そうですね。僕も生きるのが苦しくなっていた時期が昔あったし、ハワイに来たくても来れない時期もあったし、その大変な時期があったからこそ、お客さまが今そのシチュエーションでいると分かっちゃうんです。あの時の自分に今の自分だったらこう声をかけるという言葉を、イルカちゃんを通して、メッセージを託して伝えます。

―― それこそ通訳みたいな感じなんですね。

豊かな自然が教えてくれるもの(写真提供/Dolphin Eyes)
豊かな自然が教えてくれるもの(写真提供/Dolphin Eyes)

―― 最後に自然環境の話もしたいんだけれども。写真集に書かれていた言葉で「笑顔」の次に多かったのが「自然」。いろいろキーワードをピックアップしてみたんだけれども、「自然の大切さ」とか、「魂が喜ぶこと」とか、「次世代の子ども」とか、「ありのまま」「自然体」「ハッピー」「ワクワク」「自分を信じる」「つながる」という言葉が入っていますよね。

ダイスケ そうですね。

―― 言葉自体にもパワーがあるけれども、人間だけじゃなくて自然との共存を伝えている気がして。イルカがいて、人間がいて、もう一つ絶対必要なのが「海」。海がなかったら、イルカと出会いようがないじゃない。その自然も大切にしないといけない。ビフォーコロナでは、かなりの船が海に出ていたと。500艘ぐらいあると聞いたんだけれども。

ダイスケ ボートはたくさんあるんですけれども、全部が全部海に出るわけじゃないです。

―― 実際、ツアーでは船はどれくらいの数が出ているの?

ダイスケ 多いときは25~26艘います。

人がいなくなった海でのイルカたちの様子は

―― イルカちゃんたちも異変を感じているよね。だってボートもないし、誰もいないわけだから。

ダイスケ だからコロナ前までのイルカちゃんがよく遊びにくる場所があったけれども最近あまり来ていないし。

―― それは何? 人間にあいさつしに来なくなったということ?

ダイスケ 船がいないからどこでも休める、ということかな。

―― 場所を選ばなくてよくなったから?

ダイスケ 余計自由になったという感じかな。

―― 例えていうなら、すごい追っかけファンが多いスターがいて、隠れるように生活していたのが、もう誰も来ないから普通に、隠れなくてもよくなるみたいな。

ダイスケ そんな感じなのかと、僕は思います。

―― 泳ぎはどう? 軽やかに泳いでいる?

ダイスケ 彼らは本当に自由なので、彼らが好きなときに寝て、好きなときにご飯を食べて、ありのままの姿で生きているんですよね。

―― つまり、人間が来たからこうするとか、来ないからどうするとかそういうことは関係ないわけよね。

ダイスケ 関係ないです。彼らが本当につながりたい、遊びたいって思ったら向こうから来るし、遊びたくないときはスッと潜っていくし。眠たいときにアプローチするやり方は僕はガイドとしても好きじゃないから。

人と自然、どうやって共存していくか(写真提供/Dolphin Eyes)
人と自然、どうやって共存していくか(写真提供/Dolphin Eyes)

―― 今、旅行業界は大打撃で、ツアーがなくなったり、会社自体をたたんだりしている場合もある。今、起きているこのことは、ハワイ島や自然にとってどうなんだろう。どう思う?

ダイスケ コロナの影響で亡くなった人や困っている人がいるので発言は難しいと思うんですけれども、自然にとっては絶対にプラスだと思う。だから、今、再開するのは早過ぎるような気がします。僕は9月と言ったけれども、ハワイの書き入れどきというのは夏だから、ハワイの経済を考えると夏じゃないと駄目なのかなとも思うけれど。地球のことを考えると、1年ぐらい休ませるというのはすごく大事なんじゃないかなと思います。

―― 久しぶりに海に行ってみて、今、イルカちゃんたちはどんなメッセージを送っているいると思う?

ダイスケ コロナの影響で、人が来なくなっていて、世界の経済がシャットダウンしている状態というのはやっぱり絶対意味があると思うし、前のような日常をみんな求めてはいるけれども、もうそうはいかないと。「このままだったらダメだ。これを機に変わろうね」と、いうメッセージは感じますね。

―― そうですね。

ダイスケ 僕は、今、自分に起きていること、生活のこととか、家族のこととか、仕事のこととか、なんでもいいんですけれども、自分が思っている不安なことに、イルカちゃんは「大丈夫だよ」と言ってくれる。

イルカたちからの「大丈夫だよ」というメッセージを受け取って(写真提供/Dolphin Eyes)
イルカたちからの「大丈夫だよ」というメッセージを受け取って(写真提供/Dolphin Eyes)

ダイスケ 観光という字は、「光を観る」と書くじゃないですか。

―― 本当だ。

ダイスケ だから、観光業というのは、「光を観せる」仕事だと思っているんです。イルカという光を一番いいポジションで観れる場所に連れて行っている。

―― そこに導くガイドですものね。

ダイスケ はい。その日によってコンディションが違うし、イルカの数も種類も違うから、お客さんたちに合ったガイドをするようにしています。

―― ダイスケさん自身は、これからガイドを続けるに当たって、自然との向き合い方が変わると思います?

ダイスケ 変わります。

―― どう変わる?

ダイスケ 前から感謝はできていたつもりなんですけれども、当たり前になっていた。当たり前にご飯を食べたり、こうやってしゃべったり。全てが当たり前になっていたと思うんですね。人と出会えること、遊びに行けること、ご飯が食べられること。

―― そうだよね。

「次世代の子どもたちへつなげていきたい」。息子さんともに海に入るダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)
「次世代の子どもたちへつなげていきたい」。息子さんともに海に入るダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)

ダイスケ この2カ月で食料不足も考えないといけなかったし。自分に子どももいて、地球の自然の素晴らしさを次世代の子たちにバトンタッチしていかないといけないのに、うちらの世代で止めちゃうのは絶対いけないと思うから。そういうことも全部踏まえた上で変わっていかないと、また第2波、第3波が来るかもしれない。今回のコロナの一件で、心の準備や気持ちが変わっていない人は第2波に耐えられるのかなと。深刻な話ですけれども。

―― ダイスケさんは、そういう意味では、海に入れないときからガラっと考え方を変えて焦ったりイライラしたりすることなく、これを受け入れた。

ダイスケ いやいや、めちゃめちゃ焦ったし、イライラもしていた。でも、家族のおかげで、冷静になりました。ケンカすることもなく、ドンと構えてくれている奥さんがいたから。

―― まさに、ステイホームは、家族への感謝と絆を深める時間だったんですね。

ダイスケ 本当にそうですね。ありがたいですね。

●第1回インタビュー記事はこちら

●第2回インタビュー記事はこちら