「イルカに好かれる人というのは」 年330日海に潜るドルフィンガイドが今、伝えたいこと

野生のイルカたちの自由な姿に涙する人が多い(写真提供/Dolphin Eyes)

 ハワイ島在住のドルフィンガイドで、写真家のダイスケさん(Ronald Daisuke Jourden)。

 1986年ハワイ生まれ大阪育ち。ハーフで生まれ、物心が付いた時からイルカが大好き。2012年ハワイ島へ移住。年間330日を海で過ごし、彼らと会話できる様になり、素潜りで写真を撮り始める。

 海とイルカとともに生きるダイスケさんから、今、伝えたいメッセージとは?(連載3回の第1回)

イルカたちは今、何を感じているのか(写真提供/Dolphin Eyes)
イルカたちは今、何を感じているのか(写真提供/Dolphin Eyes)

―― 今のハワイ島の状況、海はどんな状態ですか。7月末まではどこもクローズというのを聞いたのですが。

ダイスケ ハワイ島は、コロナの感染者はゼロになったんで、結構緩和されてはきました。レストランは6月1日からオープンし始めたという感じなんですけれども。観光客はまだ来れない状態です。現状、ハワイに来てもハワイの州知事が14日間の外出禁止令を出しているので、今は地元の人とか長期の観光客しかいないので、海の写真を撮るにはもってこいです。

―― それはキレイだってことですか。

ダイスケ はい、海はすごくキレイになりましたね。

―― 海にはもう入ってもいいんですよね。

ダイスケ 海には、ロックダウンが始まったときから、エクササイズとして、運動という名目では大丈夫だったです。サーフィンも大丈夫でした。ただ、ビーチでのんびり過ごすのは当初ダメだったんですけれども、5月の半ばから大丈夫になりましたね。

ビフォーコロナではほとんど海にいたダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)
ビフォーコロナではほとんど海にいたダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)

―― ダイスケさんは海には入っていたんですか。 

ダイスケ 春分の日の後ぐらいからのロックダウンだったんですが、それから5月中旬くらいまでは一度も入っていませんでした。

―― じゃあ、2カ月近く。そんなに海に入らなかったことなんてあるんですか。

ダイスケ ないですね(笑)。日本に帰るとか、旅で1カ月家を空けることはあっても、海に入らなかったことはない。特に、最初の1カ月半は一切海にも行かなかったので、体もやっぱり変わりました。

―― どんなふうに。

ダイスケ 海で泳ぐ体質、体形だったんです。本当に筋肉が柔らかくて普段泳いでばかりなので。

―― それが違ってきた。海で泳ぐ体形というのは、水かきができているとか(笑)。

ダイスケ あ、できていますよ。水かきはまだあるんだけれども、体の筋肉が全然違っていて、体重も2キロちょっと落ちました。

―― やっぱりそれだけ体力を使っていたんですね。

ダイスケ そうですね。海に入っている時は、すごく食べなきゃダメなので。

ロックダウンで海の透明度が全然違う

―― 実際に2カ月経って、5月中旬に海に入った時はどんな感じでしたか。

ダイスケ 海はやっぱり気持ちよかったです。最初は足湯みたいな感じで足だけしか入らなかったんです。ちょっと海をチェックしに行こうって、誰もいないビーチで足だけつけて。

―― どうでした?

ダイスケ やっぱり気持ちよかったです。

―― 海には変化がありましたか。

ダイスケ 海の色はもう全然違います。透明度がすごかったです。

―― 人が入らないと違うのかな。

ダイスケ やっぱり観光地なので日焼け止めとか塗って入ったりすると影響が出ると思います。空の色とか空気、海の感じも全て軽くなった気がしますね。

―― 海に1カ月半入らなかった前は、年間どれくらい入っていたんですか。

ダイスケ 年間330日泳いだという時もありました。2016年だったかな。1年だけ日記付けようと思って、海に行ってイルカと会えた日が323日。

―― ほとんど毎日ですね。

ダイスケ その年はもう、ハワイ島から出ず、ずっと仕事をしてオフの日も海に行ったりしていたので。普段は週5日ぐらい。

―― 海に1回行ったらどれくらいの間、海の中にいるんですか。

ダイスケ その時々で変わります。プライベートで行くのとツアーで行くのと全然違うので。やっぱり生き物相手なので、彼らの生態があるじゃないですか。イルカは夜行性なので、夜アクティブになって、午前中リラックスしに来るので、あまり寝ている時間、僕らが邪魔するのも悪いと思って。

イルカのリラックスタイムは午前中(写真提供/Dolphin Eyes)
イルカのリラックスタイムは午前中(写真提供/Dolphin Eyes)

―― 朝はイルカのリラックスタイムなんですね。

ダイスケ はい。イルカツアーというのは朝だけなんです。お昼からのツアーというのは結構ビジネス目的にしている会社が多くて。朝イチのほうが彼らも寝る前でリラックスして泳いでいます。人間と一緒で、毎日彼らの機嫌も違うので。

―― イルカたちの機嫌に応じて、対応を変えるわけですね。

ダイスケ 機嫌がいいときは長く泳ぐし、眠たそうなときはちょっと中で挨拶をして、「ありがとう」と言うくらいで。

―― ツアーは、忙しいときだと週に何回ぐらいあるんですか。

ダイスケ 僕が勤めているのは、小さい会社なので、スタッフがほぼ僕1人でツアーに出ているので、休みが決まっていないんです。夏になると3週間通してツアーに行っていて。上司からも気を使ってもらって、週5日でと言われるんだけれど、やっぱりイルカと泳ぐのが好きなので。イルカと泳いで、それで人を喜ばせて、自分の仕事にもなって、プラス自分のやっている活動もお客さんたちにPRできるという、最高の条件が全部整っているので、僕は毎日出たいと言っていました。

―― 朝のツアーだと、何時から何時までなんですか。

ダイスケ お客さまをホテルでピックアップするのは、一番早いホテルで7時半。それまでに会社に行って、車を取ってきて、道具の準備して。ピックアップして港に行って、港でイルカの注意事項を説明してから出港、泳ぎ終わってホテルに送って帰ってくるというのが一般的です。

―― ホテルに帰ってくるのは何時ぐらいですか。

ダイスケ イルカのいる場所によって時間が変わってくるので、大体お昼ぐらいか、昼過ぎ、12時半、13時ぐらいの間に。

ダイスケさんが至近距離で撮影できるのは信頼されているから(写真提供/Dolphin Eyes)
ダイスケさんが至近距離で撮影できるのは信頼されているから(写真提供/Dolphin Eyes)

―― イルカの機嫌にもよると思うんですけれども、海に潜っている時間は?

ダイスケ 大体30分から1時間。イルカを見つけないといけないので。

―― そうですよね。いつもそこにいるとは限らないものね。

ダイスケ いる場所は毎日違います。

―― その場所を探すのもダイスケさんの仕事なんですね。イルカがいるポイントってどれぐらい把握できているのかしら。

ダイスケ もうどこにでもいます。彼らは湾内で休む傾向があるんですけれども、ツアー中に湾で休んでいるイルカちゃんもいれば、寝る場所を探して移動しているパターンもあるのでポイントが決まっていないんです。どこにでもいる可能性がありますが、浅瀬、深いところにはいないので、ハワイ島の西側の港を出港して、浅瀬を船で走らせながら肉眼で背びれを見つけたり、ジャンプしているところを見つけたりしています。

―― すごい。肉眼で。ダイスケさんは、スキンダイビングもされるじゃないですか。素潜りで、結構な時間、潜っていますよね。

ダイスケ そうですね。調子いいときで1回で2~3分潜っています。でもツアー中はそれだけ潜っちゃうとお客さまを放置しちゃうので。やっぱり泳げない人もたくさん来るので、そういう人たちを引っ張っていってイルカちゃんをそばで見せるというのがツアーの目的なんです。

―― イルカが好きでイルカとも泳ぎたいけれども、そのイルカとお客さんをつなぐ役をしているということですね。

ダイスケ そうですね。

64頭のイルカと顔見知り

―― ドルフィンガイドとしてのキャリアは何年ぐらいになるんでしょうか。

ダイスケ 今年で8年になります。ハワイ島に2012年に来たので。

―― 8年で何頭ぐらいのイルカと接していますか。

ダイスケ 僕が名前を付けている子が64頭。多いときはもっと群れが大きいので、それ以上の子たちに会っていますね。

―― 64頭のイルカは識別できるんですね。

ダイスケ できていますけれども。8年前にいた子が今はもう会わなくなっていることもあります。

―― イルカって何年ぐらい生きるものなんだろう。

ダイスケ 種類にもよるんですけれども、ハワイ島の場合は大体30年ぐらい。野生の子のほうが長生きと言われています。

―― ハワイ島では何種類のイルカに会えるのかな。

ダイスケ ハワイ島で僕らがツアー中に出会う可能性が高いイルカちゃんは3種類です。そのほとんどがハシナガイルカ。あとは、バンドウイルカとマダライルカです。外洋に行けばシワハイルカとかまた違う種類のイルカに会うことがあるんですけれども。

ダイスケさんと泳ぐイルカたちがまるで目の前にいるように思える写真やDVD(撮影/佐藤智子)
ダイスケさんと泳ぐイルカたちがまるで目の前にいるように思える写真やDVD(撮影/佐藤智子)

―― 写真集も動画もDVDも拝見したんですけれども、なんか海の中に一緒にいるような感じがしますね。

ダイスケ ありがとうございます。全部素潜りで撮っています。

―― チラチラ見えているのはダイスケさんのフィンですよね。まるでイルカの仲間みたいに見えるし、すごい至近距離じゃないですか。これはもうイルカから相当信頼されていないと撮れない映像だなと。イルカとは、最初から仲良しなんですか。それとも時間をかけて徐々に。

ダイスケ いや、機嫌があるので、機嫌が悪いときって海に入る前に動きで分かるので。

―― 機嫌のいいイルカはどういう感じなのかしら。

ダイスケ 機嫌がいいときは潜っていくと、クリック音をならしてくるんです。

―― 言葉にすると、どういう音なんだろう。

ダイスケ 「カチカチ」みたいな。クリック音でスキャニングしてくるわけです。そのスキャニングされているときはかなりそばに寄っています。

―― 「この人、何者だろう」みたいな感じで寄ってくる。チェックしているんですね。

ダイスケ 「ああ、ダイスケだ」と僕のことを完璧に分かっているイルカちゃんもいるし。だから僕も何回も会っている子には名前を付けているので、「何々ちゃんだ」と言って。

イルカの仲間のように一緒に泳ぐダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)
イルカの仲間のように一緒に泳ぐダイスケさん(写真提供/Dolphin Eyes)

―― 水中でなくても、来てる姿で分かるの? それとも周波数的な何かが。

ダイスケ 水中で潜っていて分かります。

―― 合図をするわけじゃないんでしょう。

ダイスケ 合図というか、お腹を見せたり、回転したり、スパイラル、スピンして。

―― ダイスケさんもイルカみたいな感じになるんだ。

ダイスケ はい。思い込んで潜っています。潜っていって、向こうから来てくれるんだけれども、興味のない子はやっぱり全然来ないので、そういう子はそのまま放っといてあげる。

―― その時の機嫌もあるということですよね。

ダイスケ もちろん。だから同じ子でもさっきまで機嫌がよかったのに急に寝始めるときもあるし。

イルカに嫌われてしまうという人は

―― ダイスケさんは無理やり仲良くなろうとか、こびるようなことはしないんですね。

ダイスケ しないようにしています。今回、すごく伝えたいのが、本当にマナーの悪い、間違ったアプローチの仕方をしている人がすごく多いので。

―― マナーが悪いというのは、例えば、イルカにどういう接し方をするんですか。

ダイスケ すごくシンプルな考え方で、人間と接しているような感じでイルカと接しないとダメだと僕は思っているんです。彼らにも気持ちがあるし、彼らのスペースもあるし、機嫌というのがあるので、僕らが眠たいときに同じ部屋でロックンロールのミュージックをガンガンかけられたら寝られないじゃないですか。だからそういうときはなるべくエンヤの音楽をかけるようなイメージ。だって、僕らが船でツアーに行っていると、船から発せられるエンジン音だけでも彼らからするとやっぱり影響は受けているわけじゃないですか。

―― そうですよね。

ダイスケ 彼らからするとすごくうるさいので。僕らが船から海に入る音でもびっくりする子も実際にいるんです。なので入水するときはスッと入りましょう、なるべく音を立てずにとお伝えしています。よくイルカ好きの人で、私は世界中のイルカと泳げますという人がいっぱい来てくれてうれしいんだけれども、9割の人はすごくマナーが悪い。

―― それは、イルカに触ろうとするとか、そういうこと?

ダイスケ アプローチのかけ方が強引だし、写真ばかり撮ろうとしてガンガン向かっていく人もいるし。例えば、自分の真下にイルカちゃんがいて、真下に向かって急に行くのはあまり良くないんです。

―― 人間だって、急に来られると怖いですよね。

ダイスケ 後ろから追っかけたりとか。

―― 今聞いていたら、イメージなんですけれども、行きすぎたファンみたいな感じ?

ダイスケ ストーカーになっているんです。

―― 好きすぎて、スターを追いかけて、腕を引っ張っちゃったり、抱きついたり。ワーってなっちゃうような感じかなあ。

ダイスケ 触る人はそこまでいないんだけれども、やっぱりアプローチのかけ方というのはすごく僕は大事だと思っていて。

優雅に泳ぐイルカたち(写真提供/Dolphin Eyes)
優雅に泳ぐイルカたち(写真提供/Dolphin Eyes)

―― イルカは午前中がリラックスタイムということは知らなかった。活動的な時間じゃないんですね。

ダイスケ だからビジネスを優先的にしている会社は午前中早くやって、またもう1本出る会社も多々あるんです。人が多くなればなるほどイルカちゃんも神経質になってくるので、結構そこは気を付けて。だから少人数制のツアーが僕は好きだし。スイムガイドがマネジメントできる範囲じゃないと。

―― 少人数って何人ぐらいですか。4人とか5人くらい?

ダイスケ そうですね。多い会社だと20数人、30人を超えていて、それを2人のスイムガイドで。1人が15人とか20人見るのは絶対に目が行き届かないので。

―― 危ないし。

ダイスケ はい。愚痴のように聞こえちゃうかもしれないけれども、そういう会社は生き物として、リスペクトしていないんじゃないかなとも思えます。

―― 見せ物みたいになっている。

ダイスケ そう。だから、僕は海に出るときはお客さまにちゃんと伝えていくようにしています。

―― ダイスケさんにとって、ドルフィンガイドというのは、自分の友達を紹介するみたいな感じ? 引き合わせるというか、繋げるというか。

ダイスケ はい。僕はみんながイルカと泳げば、世界が平和になると思っていて。本当にイルカが好きなので、自分の好きなものを見せて、彼らの癒しとかメッセージを伝えたい。ハネムーンで来る人もいれば、旅の思い出で来る人もいるし、イルカ好きな人もいるし、いろんな人が来るんだけれども、やっぱり来てよかったと言われたい。

イルカからのメッセージを伝えると

―― いろんなお客さんがいて、今までイルカと出会って、劇的に変わることってありますか。例えば、イルカに癒されたい目的で来ている人が、実際に、その時も変わったり、人生が好転していくという例を知っている?

ダイスケ いくつか知っています。例えば、10代の女の子が日本でもう生きていけないという。自分の命を絶とうというくらいで来ていて、その子がイルカと泳いで、救われた気持ちになったこともあるし。癒しを求めて来る人が結構いるんです。自然の多いハワイ島だし、この島って呼ばれないと本当に来れないとも言われているので。

―― そういう人たちがイルカに会えて、一瞬にして変わる人もいるの? それこそ30分くらいで。

ダイスケ すごく泣いちゃう人もいるし、誰でもビフォーアフターで表情が変わります。写真を撮ってもよくわかる。それぐらいイルカの持っている力ってすごいし、例えば、犬好き、猫好きな人もいるけど、犬や猫が苦手という人もいるじゃないですか。でも、イルカが苦手という人に会ったことがないので。

―― 確かに、「イルカが苦手です」というのは聞いたことがないですね。

ダイスケ 泳いでいるだけで「うわー」って喜ばれるじゃないですか。サメは「怖い」って言われる。同じ背びれなのに。マンタが泳いでいて「うわー怖い怖い」という人もいる。でもイルカが怖いという人ってあまり見たことがない。

誰もがイルカに会うと表情が変わる(写真提供/Dolphin Eyes)
誰もがイルカに会うと表情が変わる(写真提供/Dolphin Eyes)

イルカのありのままに泳ぐ姿に魅了されて

―― イルカのことをみんな好きと思っていて、実際に会えたらもう「うわー」ってなっちゃうし。ダイスケさんから見て、イルカの何が癒されるんだと思う?

ダイスケ 多分、日本で苦しい生活をしていたとか、型にはまった生活、合わない生活、自分にウソをついている人たちがイルカと泳ぎたいと思って、彼らの泳いでいる姿を見て、その瞬間に緊張の糸がパンって切れちゃうというか。それで移住を決めてこっちに住んでいる人もいるし。

―― イルカがありのままの、野生だから自然で何かにとらわれていない姿を見て、自分の人生と照らし合わせて、ハッと閉じていたものが開くのかな。

ダイスケ そうかもしれません。そういうのは接していて分かるじゃないですか。だから僕がちらっと「イルカちゃんはね」と言って、ひと言声をかけるとホッとして泣いちゃう人がいる。

―― どういう言葉をかけているの。

ダイスケ 「頑張りすぎないで」とか簡単な言葉でもいいんだけれども、その人によって声をかけないときもあるし、本当にイルカからのメッセージというのがあると思うんです。そのとき、その人のリアクションを見ていて、この人にはこういうメッセージを言ってあげるのがいいのかなとか。

―― 毎日そうやって海に入っていたらイルカからのメッセージを受け取れるようになったんですよね? それはどういう感じで。

ダイスケ 言葉が聞こえてくるというのではないけれど、パンって入ってくるときがあるんです。

―― シンパシーを感じるみたいな。

ダイスケ そうですね。なんとなくわかるようになりました。

船の上から撮ったザトウクジラ(写真提供/Dolphin Eyes)
船の上から撮ったザトウクジラ(写真提供/Dolphin Eyes)

―― ダイスケさんは、イルカの顔を見分けられたりするわけでしょう。性格も分かるわけですよね。仲のいいイルカを3頭ぐらい紹介してほしいんだけれども。

ダイスケ 「福ちゃん」って勝手に僕が名前を付けている子がいて。バンドウイルカなんですが。ハワイ島でバンドウイルカってあまり遊んでくれないイルカなんです。『ドラえもん』で例えると、のび太君とジャイアンの関係性が、ハシナガイルカとバンドウイルカで。バンドウイルカがいるとハシナガイルカがいなくなっちゃうんです。だからツアーだと大変なんです。海にアプローチかけても寄ってこないから。2019年2月5日にハシナガイルカの大群と泳いでいたら、急に逃げていくからなんだろうと思ったら、今までに見たことのない動きをするバンドウイルカが現れて。死んだふりしたりとかして。

―― それはお茶目な感じということ?

ダイスケ 遊びですよね。もうすごく近く、目の前、数センチのところまで来て止まったり。その子のお腹に付いているのがコバンザメといって、吸盤が付いているスズキ科の魚がいるんですが、小判だから福が来るんじゃないかと思って、「福ちゃん」と名付けました。

―― その子とは顔見知りみたいになっているわけですか。

ダイスケ そうですね。その時にすごくつながって、特徴もあるし、面白い性格だな、この子って。バンドウイルカだしと。

―― バンドウイルカというのは、本当はちょっとジャイアンみたいな性格なんだ。

ダイスケ ハワイ島では。日本のバンドウイルカたちはフレンドリーですが。

―― ハシナガイルカが逃げちゃうぐらい、ハシナガイルカとバンドウイルカはあまり一緒にはいないものなんですね。

ダイスケ ハシナガイルカを襲っちゃって殺したりするんです。

―― 人間にはバンドウイルカは攻撃的にはならないの?

ダイスケ 威嚇してくるときはあります。威嚇するときは泡を思いきり吐き出したり、口を開けてくる。

イルカとクジラは大きさが違うだけ

―― 2019年2月5日の出会いを「福ちゃん記念日」みたいにはっきり覚えているんですね。

ダイスケ 自分の中で忘れられない出会いだったんで。あと、イルカというよりクジラの種類になるんですけれども、カズハゴンドウクジラという。英語名ではmelon headed killer whaleというんですけれども。2016年1月1日に出会いました。

―― お正月?

ダイスケ ファミリー4人だけのツアーで、お兄ちゃんがいて、名前も覚えているんだけど、「いつか僕とイルカと一緒に仕事をしたいと言ってくれて。妹がいて、お父さん、お母さん、素晴らしい家族で。その日、イルカと泳いだ後に、冬なのでハワイ島ってザトウクジラが来るのでクジラを探しにいこうといったら、イルカがいたポイントから外洋3キロぐらい離れたところに潮がバーッと上がって、黒い物体が100個ぐらい、ポコってタケノコみたいに浮いて、なんだろうと思ったら、そのカズハゴンドウクジラで、僕はそれまで一緒に泳いだことのない種類だったんです。

―― どれくらい大きさ?

ダイスケ 4メートルくらい。

―― さっきのバンドウイルカはどれくらいの大きさ。

ダイスケ 2.5~3メートル。

―― そのカズハゴンドウクジラの群れがいたということ?

ダイスケ はい。すると、その家族が「行ってきてください。僕たち船で見ています」と言ってくれて。入水したときに、1頭のカズハゴンドウクジラがこっちに来てくれて。それも忘れられないツアー。

―― 根本的な話でイルカとクジラって実は同じで、大きかったらクジラなんでしょう。

ダイスケ そうです。4メートル以上のものはクジラ。

―― それ未満はイルカ、というのを知らなくて。クジラは、大きなイルカと思ったらいいわけですよね。

ダイスケ そうです。そのカズハゴンドウクジラには名前はつけてないですが。『スノー』という子もいます。ハシナガイルカです。

カメラ目線で笑う、人懐っこいバンドウイルカの「福ちゃん」(写真提供/Dolphin Eyes)
カメラ目線で笑う、人懐っこいバンドウイルカの「福ちゃん」(写真提供/Dolphin Eyes)

―― ハシナガイルカの『スノーちゃん』とはどういう出会いを?

ダイスケ 6年ぐらい前に会ったイルカちゃんなんですけれども。ツアー中にハシナガイルカと泳いでいるときにバンという衝撃があって、気付いたら目の前にいて。他の子に比べると色がすごく白くて、ちょっと感染症みたいな病気をしていて、皮膚がかゆくて自分の足ひれを体にこすりつけてくる癖があって。本当にツーショットで触れるぐらいのアプローチをかけてくる、ぬいぐるみみたいなイルカちゃん。

―― それは、いきなり近づいてきたの?

ダイスケ いきなり来て、「ワー」と思って。一気にハワイ島で有名になって。その子には13回会って。ツアー中にスノーがいたら「この1頭、やばいよ」と言ったりしていた。

―― 有名なイルカというのは、よく出没する、人懐っこいという意味なの?

ダイスケ そうですね。たぶん、そのときは仲間外れにされていたのかな。イルカ同士で感染しちゃうから。寂しくて、まだ子どもだったのでよく来ていたのかなって思っているけど。

―― イルカに仲間外れにされて、それでダイスケさんのところに行くって。すごいね、ダイスケさん。

ダイスケ 面白かったですね。

―― そういう、ちょっと傷付いたイルカには、今度はダイスケさんが癒してあげるの?

ダイスケ 僕ができることは、一緒に潜って、一緒に遊んであげたり、一緒にダンスして。でも、数年後また会ったときには大きくなっていて、そのときには遊んでくれなかったのでちょっとショックだったんですけど(笑)。

―― イルカも成長するのね。

ダイスケ もう傷も治っていて、群れと一緒にいたので、「ああ、よかったあ」と思って。イルカ同士で仲良くしているのが一番だと、僕は思っているから。

波長が合うと寄ってくる

―― 癒やし癒やされ、素敵な関係ですね。

ダイスケ 実際、イルカのヒーリング力はすごいです。例えば、障害者の方や、自閉症やダウン症の子たちもツアーに参加されますが、イルカの癒やす力が科学的にも証明されたというのを皆さん知っていまして。

―― イルカに出会うとどうなるんですか。

ダイスケ すごく感情を出してくれて、「ウー、ウー」って声を出して。すごく忘れられないのは、耳が聞こえなくて目も白内障でよく見えないという男性の方がいて。一緒に来ていた女性の方も耳が聞こえない方で、どうやってガイドしようと思って。ヌードルという浮き輪があるんですけど、それを3本ぐらい着けて、ライフベストを着けて、「海の中でイルカちゃんがいたら、僕が人差し指でタッピングしますね」と僕は紙に書いて、彼女に手話で伝えてもらって。「分かった」と彼も言ってくれて海の中に入った。そういうときは結構イルカちゃんが寄ってくるんですよね、そういう人のところに。

―― へえ。それはヘルプしようと思って?

ダイスケ 波長が合うのか分からないんだけれども、寄ってきてくれる。人差し指を彼にタップして、向こうも分かったらタッピングしてくれて。最後のほうは、彼のほうが僕のほうにタッピングしてくれて。イルカちゃんの存在を感じて。彼は、よく目は見えないけれども向こうから来ているのが分かったんです。

―― それはすごいですね。

イルカと一緒にダンスしたり、遊んだり(写真提供/Dolphin Eyes)
イルカと一緒にダンスしたり、遊んだり(写真提供/Dolphin Eyes)

ダイスケ イルカというのは、科学的にもすごい力を持っているんだと思います。脳内レベルは小学生の低学年ぐらいと言われていて、人間のように脳みそがギュッと濃縮されているので賢いと言われているんだけれども。だから、子どものようなマインドを持っている人と波長が合うから、小さい子どもとか、自閉症の人たちとかもマインドが合う。

―― 8~9歳の感じだから、ワクワクして子ども心に戻ると波長が合うんだ。

ダイスケ はい。僕はそう思っています。イルカに好かれている人はそうですね。

―― よく、イルカは、ヒーリング力があるから、弱った人とか体調が悪いときやサポートが必要なときに近くに寄ってきてくれると言うけど、実際そういうのを見たことある?

ダイスケ あります。妊婦さんとかもそう。寄ってくる。

―― ダイスケさん自体のコンディションをフォローしてくれることはあるの? 今日は調子悪いけどツアー客がいるとか。

ダイスケ もちろんです。僕も人間なので調子悪いときもあるけど、僕と遊んでくれることで元気づけようとしてくれるときもありますね。

―― わあ、素敵な関係ですね。ほんとに仲間、友達なんですね。

●第2回インタビュー記事はこちら。