食品偽装等によって失った消費者の信頼を取り戻すための意見交換会は、なぜ非公開なの?

■多発した食品偽装事件をきっかけにしてできた5つの基本原則

お菓子のお土産として全国でもトップ争いをしていた「白い恋人」と「赤福餅」が、それぞれ賞味期限と消費期限の偽装表示で摘発された事件がいつのことだったか覚えているだろうか? 女性経営者の記者会見があまりにも滑稽で、事件の本質がわからなくなってしまった船場吉兆(産地偽装・賞味期限偽装)事件も、同じ年だった。さらには、ウシ以外の肉を混ぜたミンチを「牛肉」と偽り、その後、「あれで食中毒がよく発生しなかったものだ」と関係者を驚かせるほどズサンな衛生管理が発覚したミートホープ事件も、この年であった。

2007年は、まさに食品事業者にとって忘れられない、イヤ、忘れてはならない衝撃の1年であった。あれからもう10年近くが経過しようとしている。

実は、これらの事件がきっかけになり、翌年(2008年・平成20年)3月に農林水産省は『「食品業界の信頼性向上自主行動計画策定」の手引き~5つの基本原則~』なるものを作った。相次いで発生した不祥事で消費者の信頼を失った食品業界が取り組むための「道しるべ」だという。

この5つの原則というのを見てみよう。

・基本原則1 消費者基点の明確化

消費者の信頼を得るためには、つねに消費者を基点として、商品の開発、製造、販売等を検証することが大切。 

・基本原則2 コンプライアンス意識の確立

法令や社会規範を遵守し、社会倫理に沿った企業活動を進める。

・基本原則3 適切な衛生管理・品質管理の基本

安全で信頼される食品を消費者に提供するために、適切な衛生・品質管理をする。

・基本原則4 適切な衛生管理・品質管理のための体制整備

適切な衛生・品質管理を行う体制を整備し、それが形骸化しないように改善を行う。

・基本原則5 情報の収集・伝達・開示等の取組

消費者などの信頼や満足感を確保するため、常に誠実で透明性の高い双方向のコミュニケーションを行う。

(解説については筆者が省略記述)

http://www.maff.go.jp/j/press/soushoku/sansin/pdf/080325-02.pdf#search='%E9%A3%9F%E5%93%81%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E8%80%85+5%E3%81%A4%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87'

■この意見交換会はなぜ「非公開」なのか?

「原則」なので抽象的な表現であることは仕方ない。これを元に、各事業者が自分たちで具体的に工夫するように、というアドバイスがついている。ただ気になるのは、5つの原則が事業者の「性善説」に基づいていることだ。

事業者(経営者?)が、消費者のためになるように、そして社会に貢献できるように、と考えているのだが、知識がなかったり、社員に徹底されなかったり、技術・設備・体制が整っていないために「心ならずも」法令違反を招いてしまう、ということが前提になっている。そういうことを可能な限り防ぐための行動計画である。

しかし、世の中にはそういう事業者ばかりではない。このような「原則」を知りつつ、あるいは無視して、利潤のみを求める事業者がけっして少なくはないのではないか、と消費者は疑っている。その証拠に(にはならないかもしれないが)、平成20年以降も、食品事業者による偽装や犯罪はあとを絶たない。

そのため(だと思うが)農林水産省は、平成27年6月10日に、「第1回『食品事業者のための5つの基本原則』に関する意見交換会」を開催した。その名簿を見ると、学者、食品事業者、業界団体役員、消費者代表、報道関係者と幅広い。

私は、先ほど述べたこと--キレイゴトだけではなく、現実的な解決策を話し合うのかどうか--を知りたくて「傍聴」を申し込んだ。傍聴規定をよく読まなかった私が悪いのだが、この委員会は「非公開」であった。当日、農林水産省へ行くと「冒頭の写真撮影のみ可能ですが、その後は退室してください」とのこと。

私はこのような委員会や検討会や審議会をたびたび取材・傍証している。「写真撮影は冒頭の数分間のみ可能です。あとは静かに傍聴してください」というケースはよくある(ほとんどがそう)が、取材・傍聴は不可で、写真撮影のみ許可、というケースははじめてだ。外交上の機密文書を検討するわけでもなく、個人情報に関わるテーマであるわけでもなく、消費者にきわめて関係の深い今回の意見交換会を「非公開」にする理由はどこにあるのか?

基本原則の5番目、「消費者の信頼や満足感を確保するため、常に誠実で透明性の高い双方向のコミュニケーションを行う」を、管轄する農林水産省自身がまず実行してもらいたい。