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天覧競馬で激突するライバル。互いの馬の父を知るルメールと武豊は何を考える?

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
イクイノックスに騎乗するルメール騎手(左)とドウデュースの武豊騎手

2強対決?!

 天皇賞・秋(GⅠ)が目前に迫った。

 今年、1番人気が予想されるのはイクイノックス(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎)。ご存じ、昨年の覇者で年度代表馬。今年のドバイシーマクラシック(GⅠ)ではアイルランドダービー(GⅠ)の勝ち馬で、後にキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(GⅠ)と凱旋門賞(GⅠ)を連続して2着するウエストオーバーに3馬身半の差をつけて快勝。現役世界最高となるレーティングを獲得した。

 「スピードもスタミナも瞬発力もあり、文句のつけようがありません」

 そう語るのはデビューからここまで8戦、全てでタッグを組んでいるクリストフ・ルメール。GⅠ5連勝のかかる今回も、勿論一緒に戴冠を目指す。

ドバイシーマクラシック(GⅠ)を勝った直後のイクイノックスとルメール騎手
ドバイシーマクラシック(GⅠ)を勝った直後のイクイノックスとルメール騎手

 これに次ぐ人気が予想されるのはドウデュース(牡4歳、栗東・友道康夫厩舎)だ。

 出走予定だったドバイターフ(GⅠ)を左前脚のハ行で取り消したが、その直前の京都記念(GⅡ)では目の覚めるような末脚を披露。コーナーで大外を回りながらもラスト200メートル手前で先頭に躍り出ると、アッという間に2着に3馬身半の差をつけてゴールイン。昨秋のフランス遠征では本来の力を発揮出来なかったが、さすがダービー馬という勝ちっぷりで復活の狼煙をあげた。

 「元々完成度は高い馬で、本来の走りが出来たという感じでした」

 デビューから9戦にわたって手綱を取り続ける武豊は、安堵の表情でそう語った。当然、今回もコンビで挑む。

ダービーを制した際のドウデュースと武豊騎手
ダービーを制した際のドウデュースと武豊騎手

それぞれの馬の父を知る

 25日の水曜日にはそれぞれ最終追い切りを行なった。

 イクイノックスのそれには乗らなかったルメールだが「1週前には乗って、仕上がりと状態の良さは確認しました」と言えば、一方、3頭併せの追い切りで、ドウデュースに跨った武豊は「反応が良く、相変わらず乗り味が良いな、と感じました」と語った。

 更に武豊が「ドウデュースはダービーで実際にイクイノックスを破っているので、自信を持って臨みます」と続けると、ルメールは「イクイノックスは当時より成長して更に強くなっているので、勝てる自信はあります」と旗幟鮮明に語った。

 さて、そんな2頭だが、それぞれの父はイクイノックスがキタサンブラックで、ドウデュースはハーツクライ。キタサンブラックは武豊のお手馬で、ハーツクライは逆にルメールでGⅠを制した馬だった。このあたりについて、まずはルメールの弁。

イクイノックスの父キタサンブラックは、現役時代、武豊が主戦騎手だった
イクイノックスの父キタサンブラックは、現役時代、武豊が主戦騎手だった

 「イクイノックスがどんどん強くなっているのはお父さんのキタサンブラックに似た感じだと思います。あの馬は3歳の秋から古馬になって完成していきましたから。そういう意味で、ドウデュースの成長力も警戒しなくてはいけないと考えています。ハーツクライもやはり、古馬になって強くなった馬でしたから……」

 一方、武豊は言う。

 「自分がキタサンブラックに乗り始めたのは古馬になってからなので、成長力に関しては何とも言えませんが、イクイノックスは早い時期から強かったと思います。また、ドウデュースに関しても結構、早い段階で出来上がっていました。僕は若かった頃のハーツクライにも乗っていましたけど、お父さんとは少し違う感じです」

ドウデュースの父ハーツクライがGⅠを勝った際の鞍上はルメールだった
ドウデュースの父ハーツクライがGⅠを勝った際の鞍上はルメールだった

 互いのパートナーの血統的背景も知る名手2人が、ゴール前で火花を散らした競り合いを見せるのか。はたまたディープインパクトの仔のプログノーシスら、第三の男が名乗りをあげるのか。いずれにしろ令和初の天覧競馬となる府中の2000メートルで、好勝負が演じられる事を期待しよう。

ダービーではドウデュースに軍配が上がったが、果たして今度はどうなるか?!
ダービーではドウデュースに軍配が上がったが、果たして今度はどうなるか?!

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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