Yahoo!ニュース

武豊騎手参戦、3連覇目指すエネイブル、そして日本馬3頭が挑戦した凱旋門賞の結果速報!!

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
今年の凱旋門賞のゴール前。左エネイブル、右ヴァルトガイスト

3連覇を目指すエネイブルは堂々とした素振り

 現地時間6日、フランス、パリロンシャン競馬場で凱旋門賞(G1、芝2400メートル)が行われた。日本馬3頭、すなわちキセキ(牡5歳、栗東・角居勝彦厩舎)、フィエールマン(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)、ブラストワンピース(牡4歳、美浦・大竹正博厩舎)が出走し、レース史上初となる3連覇を目指すエネイブル(牝5歳、J・ゴスデン厩舎)に武豊騎手の参戦もあった事で注目を集めたこの一戦だが、アッと驚く結末が待っていた。

落ち着いた素振りでパドックを周回するエネイブルと鞍上のL・デットーリ騎手
落ち着いた素振りでパドックを周回するエネイブルと鞍上のL・デットーリ騎手

 女王エネイブルはパドックでも落ち着いた素振り。主戦であるL・デットーリ騎手を背に、馬場入り後もいつも通りのんびり行進してみせた。

 一方、日本勢で少々気合いが乗り過ぎたように見えたのがブラストワンピース。川田将雅騎手がなんとかなだめていたが、いつもの事とは言え、イレ込み気味。ヨーロッパの馬が総じて大人しい分、尚更うるさく見せた。

ブラストワンピースは少々うるさい素振りを見せたが、大竹調教師は「いつも通り」との事
ブラストワンピースは少々うるさい素振りを見せたが、大竹調教師は「いつも通り」との事

 発走時刻の4時5分を過ぎること約3分、4時8分に出走12頭のゲートが開いた。前日に続き当日も午前中には雨が強く降る時間帯があったため、馬場状態は2日連続のTRES SOUPLE(重馬場)。しかし、こういう馬場に実績のあるエネイブルは好発を決めると、好位4~5番手を追走する事になった。

 日本勢はフィエールマンが掛かり気味に3番手、ブラストワンピースはエネイブルの後ろ。キセキはスタートが今一つで後方から。また、武豊騎手騎乗のソフトライト(牡3歳、J・C・ルジェ厩舎)もいつも通り後方からの追走となった。

C・ルメートル騎手とフィエールマン
C・ルメートル騎手とフィエールマン

エネイブルも日本馬も破って地元の伏兵が優勝

 直線に向くとまずはマジカル(牝4歳、A・オブライエン厩舎)が先頭に躍り出た。これを捉まえに来たのが女王エネイブル。フィエールマンの手応えが怪しくなり後退すると、代わって上がって来たのがジョケクラブ賞(仏G1)勝ちのソットサスと英インターナショナルS(英G1)の優勝馬ジャパン(牡3歳、A・オブライエン厩舎)。

 それでも一度は彼等の追走を振り払い、エネイブルが抜け出した。史上初の3連覇という偉業に手をかけたかと思えたが、外から1頭だけ忍び寄る影があった。前哨戦のフォワ賞(G2)でキセキ以下に完勝していたヴァルトガイスト(牡5歳、A・ファーブル厩舎)だ。サンクルー大賞やガネー賞など、3度のG1勝ちがある地元馬はエネイブルとの差を少しずつ詰めると、ラスト50メートルを切ってついに捉える。そして最後は女王に1と4分の3馬身の差をつけ、2分31秒97の時計で堂々と真っ先にゴールへ飛び込んで見せた。

馬場入り時のヴァルトガイスト(左)とキセキ
馬場入り時のヴァルトガイスト(左)とキセキ

 「夢がかないました。最終コーナーの時にあまりに手応えが良いので、エネイブルをもかわせると思いました」

 ヴァルトガイストに騎乗したP・C・ブドー騎手は満面の笑みでそう語った。

シャンティイでヴァルトガイストの調教に跨るブドー騎手
シャンティイでヴァルトガイストの調教に跨るブドー騎手

 また、2着に敗れたエネイブルのデットーリ騎手は「馬場がドロドロで、最後はそれが影響してしまった」と淡々と語った。

 日本勢は残念ながら見せ場を作れず、キセキの7着が最先着でブラストワンピースが11着。フィエールマンはC・ルメール騎手が「序盤に掛かった分、トップスピードに乗らないまま終わってしまった」と最後も無理をさせなかったためシンガリ12着に敗れた。

 また、武豊騎手のソフトライトは終始追い通しながら最後までジリジリと伸び、6着まで追い上げた。「なかなか前に進んで行こうとしなかったので苦労しましたが、バテずによく伸びてくれました」と日本のナンバー1ジョッキーは語った。

ソフトライトと武豊騎手。追い上げるも6着に終わった
ソフトライトと武豊騎手。追い上げるも6着に終わった

 今年で98回目を数えるヨーロッパの頂は、またしてもヨーロッパ以外から来た馬がそこに達する事は出来なかった。地元の厚い壁の前に日本馬はかえり討ちを喰らう格好となり、各関係者も残念そうにうなだれた表情を見せた。

 しかし、競馬は負けるのが当たり前のスポーツだ。エネイブルだって負けたのである。今回の挑戦は、イギリスのニューマーケットに入厩させてから直前に輸送をするなど、今までとは違うアプローチもあった。これらを全て今後の糧として、いつの日か日本馬が頂点を極める日が来る事を願おう。

ヴァルトガイストの口取り風景。右の小柄な男性がA・ファーブル調教師
ヴァルトガイストの口取り風景。右の小柄な男性がA・ファーブル調教師

(写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

平松さとしの最近の記事