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ヨーロッパに滞在する日本馬4頭の現在とこれから

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
愛チャンピオンSに出走したディアドラ(左端、赤帽)は僅差の4着に惜敗

ディアドラは愛チャンピオンSでも好走

 9月14日〜16日。日本が3連休で3日間競馬だったこの時、私は欧州各国をまわっていた。

 まずは14日の土曜日。ディアドラ(牝5歳、栗東・橋田満厩舎)がアイルランドのアイリッシュチャンピオンS(G1、レパーズタウン競馬場)に挑戦した。イギリスのニューマーケットから前日にアイルランドへ移動。チャーター機のトラブルで本来の時間より8時間も余分にかかってしまったそうだが、レースでのパフォーマンスを見る限りその影響は無さそうだった。結果こそ4着に敗れたが、直線で前が詰まる不利がありながらも最後は猛追。勝ったマジカルこそ抜けていたものの2、3着馬とは馬体を並べてゴール。フィニッシュラインを過ぎた後には勝ち馬に並びかけるという善戦を演じてみせたのだ。

 「もったいない競馬になってしまいました。ただ、馬の状態は良かったし、これだけのメンバーに入っても好勝負が出来る事が分かったのは好材料です」

 橋田は悔しそうな表情でそう語った。

愛チャンピオンSでのディアドラ。鞍上はO・マーフィー騎手
愛チャンピオンSでのディアドラ。鞍上はO・マーフィー騎手

キセキは本番での変わり身を期待

 翌15日の日曜日は場所をフランスに移し、キセキ(牡5歳、栗東・角居勝彦厩舎)が凱旋門賞の前哨戦にあたるフォワ賞(G2、パリロンシャン競馬場)に出走したのを観戦。4頭立てといえ好メンバーが揃っていた事もあり、逃げバテて3着に敗れた。

 「出来れば控える競馬をして欲しかったけど、行く形になってマークされてしまいました。でも、これで本番までに変わってくれれば……」

 角居は残念そうな表情を隠す事なく、そう言い、予定通り凱旋門賞へ向かうと口にした。本番はエネイブルやマジカル、ジャパンなど、更に強敵が集う予定。正直、立場はかなり苦しくなったが、休み明けを叩かれての変わり身に期待しよう。

C・スミヨン騎手を背にフォワ賞に出走したキセキは4頭立ての3着に終わった
C・スミヨン騎手を背にフォワ賞に出走したキセキは4頭立ての3着に終わった

ニューマーケットから凱旋門賞を目指す日本の2頭

 また、更に翌日の16日にはイギリスのニューマーケットを訪れた。この地にも凱旋門賞を目指す日本馬、すなわちフィエールマン(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)とブラストワンピース(牡4歳、美浦・大竹正博厩舎)がいたので、様子を見に行かせてもらった。

 2頭は共に落ち着いた素振り。ニューマーケットの数ある調教コースの中から、この日はロングヒルと呼ばれる長い坂路コースを駆け上がった。縦列で前をフィエールマン、後ろをブラストワンピースが追走する形で走り終えると、現地の獣医師が乳酸値を計測。結果、2頭は共に至って元気でこのくらいの調教は楽にこなしている事が判明。さすが日本のG1ホースだと思わせた。

 凱旋門賞へ挑戦するにあたり、日本馬はヨーロッパへの長距離輸送というどうにも出来ないアキレス腱を抱えている。そんな中、日本馬が日本でのレースを叩いた後、イギリスへ渡り、ここから直前にフランスへ更に移動して凱旋門賞へ挑戦するというのは初めての試み。果たしてどんな結果が待っているのか、今後を占う意味でもこの2頭にかかる期待は大きい。

英国ニューマーケットで調整されるフィエールマン(前)とブラストワンピース
英国ニューマーケットで調整されるフィエールマン(前)とブラストワンピース

 こうして3日間、3カ国で計4頭の日本馬を見てきた。日本馬が海を渡るようになって久しいが、今年はその勢いに拍車がかかった感がある。まずは凱旋門賞に挑戦する3頭、そしてディアドラが次走としてどこを選択するのか。まだまだ楽しみは続く。

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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