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アウシュビッツ博物館:1月にXフォロワー6万増加。インプレッション・エンゲージメントも大幅増加

佐藤仁学術研究員・著述家
(提供:Paolo Giandotti/Italian Presidency Press Office/ロイター/アフロ)

インプレッション2067万・エンゲージメント98万増加

アウシュビッツ絶滅収容所博物館の公式X(旧ツイッター)が、2024年1月でインプレッションが6807万回あり、エンゲージメントが378万(472,000リポスト含む)だったことを報告。

1か月前の2023年12月にはインプレッションが4740万回だったので、1月は2067万増加。エンゲージメントは2023年12月は280万回(414,000リポスト含む)だったので、1月は98万増で、インプレッション、エンゲージメントともに大きく増加している。1月27日が国際ホロコースト記念日で1945年1月27日にソ連軍によってアウシュヴィッツ絶滅収容所が解放された日で、イベント情報が多く発信されたり、国際ホロコースト記念日がニュースなどで多く取り上げられたこともインプレッション数とエンゲージメントの増加の要因の1つだろう。

また、2024年1月に1か月で61,630人のフォロワーが増加し、2,593人が解除してしまったことも報告していた。

アウシュビッツ絶滅収容所博物館は「アウシュビッツで起きた人類の悲劇の記憶は、より良い未来の創造につながります」とコメントしていた。

160万超のフォロワーに毎日犠牲者の誕生日をお知らせ

アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではX(旧ツイッター)で毎日情報発信を行っている。アウシュビッツ絶滅収容所博物館のX(旧ツイッター)では、毎日、アウシュビッツ絶滅収容所で犠牲になった方々の誕生日や殺害された日に、彼らの写真とともに生まれた場所、いつ殺害されたかをポストしている。110万人以上が殺害されたアウシュビッツ絶滅収容所なので、毎日誰かしらの誕生日である。ナチスドイツではヨーロッパ中のユダヤ人を絶滅することを政策として掲げていたので、支配した地域でもユダヤ人をリスト化していた。そしてどの地域で何人のユダヤ人をどこの収容所に送るという"ノルマ達成"を官僚主義的に行っていたが、その際にもきちんとユダヤ人の情報をリスト化していた。そのようなナチスドイツによるユダヤ人の徹底的な管理に向けた"まめな記録"が現在ではデータベース化されており、アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではその日が誰の誕生日かがわかる。

写真が残っていない犠牲者の場合は文字だけで犠牲者の情報をポストしている。ユダヤ人にとっては家族や友人らとの幸せだった時代の写真は貴重なものでアウシュビッツまで持ってきたが、ナチスドイツにとっては全く価値のないものだった。そのためすぐにナチスドイツによって焼却されてしまったので、平和な時代の写真が残っているのはとても貴重である。だがアウシュビッツでは強制労働に適していると判断された囚人らは3方向から写真撮影されていた。それらの写真がデジタル化されて保存されており、3枚の写真が犠牲者の誕生日に掲載されることが多い。多い日には1日に10人くらいの犠牲者がポストされることもある。

さらにアウシュビッツ絶滅収容所博物館では、大量にある犠牲者の写真の他にも文書、遺品などをデジタル化して保管しており、それら貴重な歴史的コンテンツを毎日X(旧ツイッター)で世界中に発信している。

アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではフォローの呼びかけを積極的に行っていたのでフォローはしたものの、アウシュビッツ絶滅収容所での犠牲者の写真、小さな子供の写真、生々しい死体焼却の写真や残虐な写真などが毎日多数ポストされているので、見ているのが辛くなったり気分が悪くなったりしてしまいフォローを外してしまう人も多い。確かに見ているだけで辛い気持ちになるのは、ホロコーストを研究している欧米やイスラエルの研究者でも多い。毎日このようなポストが多数流れてくると気分が滅入ってしまいフォローを外してしまうのも頷ける。

アウシュビッツ絶滅収容所博物館では、2019年8月に「解放75年を迎える2020年1月までに、X(旧ツイッター)のフォロワーを75万人まで目指す」と掲げていた。当時は55万人程度のフォロワーだったが、2019年末には75万まで到達し、目標はクリアした。その後、アウシュビッツ絶滅収容所博物館では「フォロワーを2020年1月27日(国際ホロコースト記念日)までに100万人」と目標を上方修正し、この目標もクリアされ、2022年末までにフォロワー数150万の目標を掲げてクリアした。2024年1月末で160万のフォロワーがいる。

アウシュビッツ絶滅収容所博物館のX(旧ツイッター)ではホロコースト関連のニュースや犠牲者の情報、生存者の体験など決して明るいニュースや情報ではなく、目を覆いたくなるような写真や生々しい情報も多い。

2023年10月に武装集団ハマスがイスラエルを攻撃してからは、様々な反ユダヤ主義に関する情報や陰謀論がSNSで多く拡散されているが、アウシュビッツ絶滅収容所のX(旧ツイッター)ではホロコースト時代の様子やニュースだけでなく、現代社会のヘイトスピーチや民族憎悪、欧米では根強く残っている反ユダヤ主義に対しても警鐘を鳴らしている。

▼平和な時代に撮影されたユダヤ人の写真を掲載するアウシュビッツ絶滅収容所博物館のX(旧ツイッター)

▼3方向から撮影された労働に適しているとされたユダヤ人

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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