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ゼレンスキー大統領「ロシア軍攻撃のためドローン製造・調達・訓練・操縦をしてくれる全ての人に感謝」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

ゼレンスキー大統領「特筆すべき攻撃はドローンによって行われています」

2023年11月8日にウクライナのゼレンスキー大統領は自身の公式SNSで「毎日、ウクライナ軍の兵士がロシア軍の軍事設備や侵略者を攻撃して破壊してくれています。その中でも特筆すべき攻撃はドローンによって行われています。ドローンを製造し、戦場までドローンを調達してくれる全ての人に感謝しています。そして、ドローン操縦をしてくれる人とそのような操縦士を訓練してくれる人にも感謝を伝えたいです」と投稿。

またウクライナのメディアUnited24が制作した攻撃ドローンによる攻撃シーンの動画も一緒に公開していた。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。またウクライナ軍では監視・偵察目的で導入した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させてダメージを与えている。小型民生品ドローンに爆弾を搭載して標的に突っ込んでいく、いわゆる神風ドローンによる攻撃もよく行われている。ウクライナ軍では多くの安価な民生品ドローン、FPVドローンに爆弾を搭載して、ロシア軍の高額な戦車など軍事設備に爆弾を投下したり、突っ込んだりして破壊しておりコストパフォーマンスは高い。しかも戦車やミサイルと違ってドローンの操縦は簡単である。

ウクライナ国内で組み立てて、すぐに最前線へ

ウクライナ政府は国内外から多く調達していたが、最近ではウクライナでは自国で開発、製造してすぐに最前線に送っている。製造と言っても戦車や大型ミサイルのように複雑な兵器ではないので、基本的には部品を組み立ててドローンを作っている。

ゼレンスキー大統領が感謝を伝えているように、ウクライナ国内で製造(組み立て)をして、すぐに最前線に調達できるので、国外から輸入されるドローンよりも早く現場に送られるので時間が短縮できる。ウクライナ軍はロシア軍のドローンを毎月数百機ほど破壊している。ウクライナ軍のドローンもロシア軍によってかなり破壊されている。そのため、最前線では、今すぐにでもドローンが欲しいという状況である。ドローンはロシア軍への攻撃、監視に大きく貢献しているが、ロシア軍によって破壊されている数も相当である。戦場ではドローンは何機あっても足りない。

ドローン操縦スキルを習得して実戦へ

またゼレンスキー大統領がもう1つ感謝を伝えていたのが、ドローン操縦士と訓練をしてくれる人たちである。現在のウクライナ紛争で、ウクライナ軍でドローンを操縦して監視をしたり、攻撃をしたりしている兵士のほとんどがロシア軍が侵略してからドローンの操縦を覚えている。

ドローンは大型の戦車のように操縦と比べると高度なスキルは求められていない。停止している監視塔などにFPV神風ドローンで突っ込んでいき破壊するのは初心者でもやりやすい。だが誰もがすぐに操縦して上空から爆弾を投下したり、動いていたり走っていたりする戦車や輸送車にドローンごと突っ込んでいくことは容易ではない。またロシア軍は徹底的にドローンを迎撃するために砲撃したり機能停止しようとするので、そのような敵軍の迎撃を回避しながら監視や攻撃を成功させるためにもそれなりのスキルが必要である。

ある程度の訓練を受けてから、ドローン操縦のスキルを徐々に向上させていっている。ドローン操縦スキルを身に着けて、実戦で監視や攻撃を行っていく。ドローン操縦は最前線の塹壕からだけでなく基地や部屋の中からも攻撃や監視が可能なので負傷兵や年老いてからも操縦ができるのも特徴の1つである。

▼戦場でドローンにかかわる全ての人に感謝を伝えるゼレンスキー大統領の公式SNS

▼初めてロシア軍の戦車にFPV神風ドローンで攻撃を行ったウクライナ兵

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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