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ウクライナ軍のドローン、1週間でロシア軍の拠点142か所・榴弾砲/大砲69門・兵士52人など破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

副首相「先週はロシア軍にとってまさに大惨事」

2023年10月2日にウクライナの副首相のミハイロ・フェドロフは自身のSNSで、ウクライナ軍のドローンが2023年9月25日から10月2日までの8日間で破壊したロシア軍の軍事設備やロシア兵の状況を発表した。

副首相は「先週はロシア軍にとってまさに大惨事でした。ドローンでの攻撃は功を奏して220の軍事設備を破壊しました。これからもドローンのパイロットは攻撃を続けて新たな記録を打ち立てていきます」とコメント。

副首相は以前からウクライナ軍でのドローンによる攻撃、ウクライナでのドローン開発や諸外国からのドローン調達を主導してきたが、副首相がドローンによる攻撃で具体的な標的として大砲を集中的に狙っていたと伝えるのは珍しい。

ウクライナ軍のドローン部隊は先週は大砲を集中的に狙っていたと副首相は述べているが、この1週間でドローンが破壊したのはロシア軍の拠点が先週よりも18か所多い142か所、榴弾砲/大砲が先週よりも5門多い69門、ロシア兵への攻撃が先週よりも16人減少して52人、トラックが先週よりも14台少ない41台だった。先週よりもロシア兵への攻撃は減少しているが、ロシア軍の拠点の破壊数は増えている。

ミハイロ・フェドロフ副首相のSNSによると、2023年9月25日~10月2日までの1週間でドローンで破壊したのは、以下の通り。(かっこ内は前週との比較)

・ロシア軍の拠点:142か所(+18)

・榴弾砲/大砲:69門(+5)

・ロシア軍兵士:52人(-16)

・トラック:41台(-14)

・装甲戦闘車両:37台(-1)

・戦車:33台(+6)

・自走砲:17台(+8)

・弾薬・燃料庫:17か所(+9)

・モーター・対戦車ミサイル・マシンガン:10機(+3)

・通信システム:10機(+7)

・多連装ロケットシステム:3機(+2)

ウクライナ軍では2022年2月24日にロシア軍に侵攻されてから殺害したロシア軍の兵士の数、破壊した戦車、戦闘機など兵器の数をほぼ毎日公表している。これらはどのような兵器で破壊したかの内訳までは不明だった。

副首相は2023年8月に入ってからドローンという特定の兵器で破壊した数を不定期的だが公表している。ドローンによるロシア軍への攻撃シーンを多く公開して、戦場におけるドローンの重要性をアピールしている。

ウクライナ軍ではロシア軍の装甲戦闘車両や戦車、大砲といった軍事施設をドローンで攻撃して破壊することが多い。偵察監視ドローンが上空から大砲を探知したら、ミサイルを撃ちこんだり、攻撃ドローンで攻撃したりして破壊している。

また小型民生品ドローンに爆弾を搭載して突っ込んでいき爆発させるいわゆる神風ドローンのタイプで、上空から大砲に突っ込んでいき軍事施設を破壊している。燃料などに引火すると大爆発することもよくある。また小型民生品ドローンから爆弾を投下して破壊することもある。安価なドローンを遠隔から操作して突っ込んでいったり、爆弾を投下することによって高価なロシア軍の軍事施設を破壊しているのでコストパフォーマンスは高く、効率は良い。ドローンは非対称の戦いに最適の兵器の1つである。

ロシア軍の塹壕に神風ドローンが突っ込んでいったり、ドローンから爆弾を投下してロシア兵を殺傷している。神風ドローンや小型の民生品ドローンでの爆弾投下によってロシア軍の軍事施設を破壊しているシーンの動画もよく公開されている。

▼ウクライナ副首相の公式SNSでドローンによるロシア軍軍事施設破壊状況の報告

▼ロシア軍の榴弾砲を破壊するウクライナ軍のFPV神風ドローン

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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