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ウクライナ、ロシア軍への攻撃と監視を支える軍事ドローン製造のスタートアップが200社:英メディア報道

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2023年9月に英国のメディア「ザ・エコノミスト」がウクライナで軍事ドローン開発を行っているスタートアップを紹介する動画「Inside Ukraine's DIY drone revolution」を報じていた。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ウクライナ軍では監視・偵察目的で調達した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させたり、ドローンごと突っ込んでいき爆発させている。

番組の中でも紹介されていたが、ロシア軍のウクライナ侵攻後、ウクライナでは他国からのドローンの輸出だけではドローンが足りないので、ウクライナ国内で多くのスタートアップが登場して軍事ドローンを製造している。番組ではロシア軍の侵攻前まではエンタテインメント業界にいた人が現在ではドローンを製造している事例が紹介されていた。現在のウクライナには約200のドローン製造のスタートアップがあると報じられていた。また最初は8人で始めたスタートアップも現在は40人以上の従業員が働いている企業に成長したところもある。

ドローンの部品はリサイクルした部材を使ったり、3Dプリンタで作っている。小さいものから大きいものまで様々なタイプの軍事ドローンをウクライナで開発している。製造したドローンに爆弾や弾薬、手榴弾を搭載して軍事ドローンにしてウクライナ軍の最前線に送っている。最近では対戦車地雷など大型の兵器を搭載する攻撃ドローンも開発されている。

戦場ではドローンは検知されたらすぐに破壊されてしまう。安価な攻撃ドローンでロシア軍の高額の戦車などを破壊しているので、コストパフォーマンスは高い。そのため、ドローンは検知されるとすぐに破壊されてしまうので、攻撃ドローンは戦場では何機あっても足りない。特に神風ドローンと呼ばれる標的に向かって突っ込んでいき爆発するタイプの軍事ドローンは1回攻撃したら爆発するので再利用ができない。

かつて戦場では「弾薬はいくらあっても足らない」と言われていたが、現在のウクライナではそれに加えて「ドローンもいくらあっても足らない」状況であり、このようなウクライナのスタートアップでのドローン製造が重要になっている。

▼「ザ・エコノミスト」が紹介するウクライナの軍事ドローンスタートアップ

▼ウクライナ軍のFPV神風ドローンによるロシア軍への攻撃

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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