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ドイツの対空戦車「ゲパルト」でイラン製神風ドローン「シャハド」を深夜に迎撃「映画の1シーンではない」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2023年8月14日の夜にウクライナのオデッサにロシア軍によるミサイルとイラン製軍事ドローン「シャハド」による奇襲が行われた。ウクライナ軍ではドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」などで迎撃していた。ウクライナのメディアUnited24は「これらはスターウォーズの映画の新作の1シーンではありません。オデッサで防空部隊が我々の命を守るために戦っています」と伝えていた。15機の攻撃ドローンと8機のミサイルを迎撃したと報じられている。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月に入ってからロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃していた。国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義(軍事目標のみを軍事行動の対象としなければならない)を無視して文民たる住民、軍事施設ではない民間の建物に対して攻撃を行っていた。ウクライナの一般市民の犠牲者も出ていた。

2023年8月になっても「シャハド」による攻撃は全く減っていないで、ほぼ毎日のようにウクライナの各地に奇襲をしている。特に深夜と早朝に大量の攻撃ドローンとミサイルの組み合わせで奇襲をしかけてくる。深夜や早朝の暗闇の方が視界が悪いことと、迎撃する兵士や消火部隊、救急隊員の心身の働きも鈍っていること、一般市民も寝ているので避難しにくいことから攻撃側にとっては効果的である。

今回のオデッサへの夜の奇襲に対しては、ウクライナ軍はドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」で迎撃していたと報じられている。ドイツ国防省はロシア軍がウクライナに侵攻した直後の2022年4月にウクライナ軍にドイツのクラウス・マッファイ・ヴェクマン社が製造している対空戦車「ゲパルト」50台を提供することを発表した。国防大臣のクリスティーネ・ランブレヒト氏は「今、まさにウクライナ軍が上空からの防衛に必要としている兵器です」とコメントしていた。

2022年7月にドイツから対空戦車「ゲパルト」3台が到着すると、ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防大臣もSNSで「ウクライナの上空の防衛が強化されます」とドイツに感謝を伝えていた。ドイツのショルツ首相は2022年11月にウクライナに防空システムを引き続き提供して支援していくことを明らかにしていた。

ロシア軍のイラン製軍事ドローンは大量に毎日ウクライナのあらゆる場所に攻撃をしかけてくるが、対空戦車ゲパルトの数は限られている。全てのイラン製軍事ドローンやミサイルの迎撃には対応できない。そのため、危険ではあるが日々の大量の「シャハド」などの神風ドローンの攻撃に対しては、ウクライナ兵がドローンが飛来しているところまで車で走っていったり、ビルの屋上などで構えて機関銃や地対空ミサイルで迎撃してウクライナ国土を防衛している。攻撃ドローンは大量に無人でいっきに攻撃でき破壊力も強いため攻撃側が圧倒的に優位である。

▼オデッサへの深夜の奇襲を報じているウクライナのメディア

対空戦車「ゲパルト」
対空戦車「ゲパルト」写真:アフロ

▼ロシア軍によるオデッサへのミサイルとドローンでの攻撃

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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