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アウシュビッツへの大量輸送から83年、輸送時の貴重な写真をデジタルで再生して出版

佐藤仁学術研究員・著述家
(アウシュビッツ博物館提供)

第2次大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人、政治犯、ロマなどを殺害した、いわゆるホロコースト。そのホロコーストの象徴のような施設が、ポーランドに設立されたアウシュビッツ絶滅収容所。

ポーランドに設置されたアウシュビッツ絶滅収容所では約110万人が殺害された。ホロコーストで殺害された約5人に1人がアウシュビッツで命を落とした。アウシュビッツ絶滅収容所は現在でも博物館としてホロコーストの悲惨さを伝えており、世界中から観光客が訪問している。2019年には過去最高の230万人以上がアウシュビッツ絶滅収容所を訪問していたが、2020年は世界規模でのパンデミックの影響で、アウシュビッツ絶滅収容所博物館も一時閉鎖しており訪問者数は52万人程度だった。2021年もまだ世界的なパンデミックの影響で56万人程度だった。それでも現在でもアウシュビッツ絶滅収容所は世界的な観光名所の1つである。

アウシュビッツ博物館では新型コロナ感染拡大前からオンラインやバーチャルでの展示に注力していた。仮想現実(VR)技術で紹介したり、オンラインで展示をしてホロコースト教育の教材を提供したり、パノラマで展示をしたりしている。

1940年6月14日は、最初のポーランド人728人(主に政治犯とレジスタンス参加者で生き残ったのは325人)、ユダヤ人20人が刑務所からアウシュビッツに移送された日で今年2023年で83年目。

アウシュビッツ博物館では、1940年6月14日に移送された際の様子を撮影した貴重な写真をデジタルで再生して「Tarnów - KL Auschwitz. Pierwszy transport do piekła. First Transport to Hell」というタイトルの本として出版した。

またGoogleのデジタルアーカイブ「Google Arts & Culture」にも1940年6月14日の大量輸送開始の時の様子の写真がデジタルアーカイブとして掲載されている。2020年6月14日には、アウシュビッツへの大量輸送開始80年を記念して、囚人の手紙をデジタルアーカイブとして公開した。「Google Arts & Culture」では他にもアンネ・フランクのデジタルアーカイブも公開している。他にも様々な歴史や自然科学に関する世界中の知をデジタルアーカイブ「Google Arts & Culture」で公開し、世界中の研究者の研究や学生の学習などに活用されている。

戦後約80年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰えており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。ホロコーストの記憶や経験を後世に伝えようとして、当時の写真や地図、歴史的な記録、手紙などをデジタル化して保管する動きはGoogleだけでなく多くのホロコースト博物館やユダヤ財団、大学などで進められている。またホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化も積極的に進められている。デジタル化された写真、手紙、証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても多く活用されている。

▼Google Arts & Cultureでの掲載を伝えるアウシュビッツ博物館のツイート

▼アウシュビッツへの初の大規模輸送の写真がデジタルで再生されて出版されることを伝えるツイート

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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