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ウクライナ軍、スウェーデン提供の携帯式防空ミサイルシステム「RBS-70」でロシア軍のドローン撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
「RBS-70」(ウクライナ軍提供)

ウクライナ軍では、スウェーデンの軍事メーカーのボフォース社が開発した携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)「RBS-70」のトレーニングを2023年1月から開始しており、現在ではロシア軍の上空からの神風ドローンの迎撃に貢献している。ロシア軍は毎日のようにイラン製軍事ドローン「シャへド」でウクライナ各地を攻撃している。

このような地対空ミサイルはスウェーデンだけでなくアメリカや欧州諸国からも供与されている。地対空ミサイルはドローン以外にもヘリコプターやミサイル、戦闘機などの迎撃に適しているが、破壊しているもののほとんどがドローンである。ウクライナ軍では毎日、破壊したロシア軍の軍事施設などの数を発表しているが、2023年5月9日までに破壊したドローンは約2600機、ヘリコプター約290機、戦闘ジェット機が約300機、誘導ミサイル約950発である。上空からのドローンがいかに多いかがうかがえる。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

「RBS-70」のような携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)は上空のドローンを迎撃して破壊するのに適している。ロシア軍はロシア製の監視ドローン「Orlan-10」やイラン製軍事ドローン「シャヘド」、ロシア製軍事ドローン「Lancet」を主に使用してウクライナを攻撃している。特に「シャヘド」での深夜の奇襲はいっこうに収まる気配がない。

携帯式防空ミサイルシステムを手にしたウクライナ兵が草原や塹壕の中、ビルの屋上などからロシア軍のドローンを迎撃して破壊している。またバンやトラックなどの後ろに携帯式防空ミサイルシステムを持ったウクライナ兵が乗った「移動式ドローン迎撃車」でロシア軍が奇襲してくるサイレンが鳴ると、その場所に行って迎撃している。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)は明らかにハードキルの方だ。

攻撃ドローンだけでなく、監視・偵察ドローンも発見したら、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。ロシア軍が使用している監視ドローン「Orlan-10」や民生品ドローンのような安価な偵察ドローンに対してこのような地対空ミサイルシステムで迎撃して破壊するのはコストパフォーマンスが低い。

だが偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止させたりする必要がある。また回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。ロシア軍に対しての迎撃能力誇示による抑止にもなる。

▼スウェーデンが提供した携帯式防空ミサイルシステム「RBS-70」

▼ウクライナ軍によるロシア軍の破壊状況

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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