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チェコ市民から寄付「重機関銃2機搭載のチェコ製の移動式ドローン迎撃車"Viktor"」ウクライナへ

佐藤仁学術研究員・著述家
チェコから寄付された「移動式ドローン迎撃車"Viktor"」(ウクライ提供)

「Viktor」115台がチェコ市民からウクライナ軍に提供予定

2023年5月にチェコの市民からの寄付で調達された「Viktor」という「移動式ドローン迎撃車」10台がウクライナに到着して最前線に送られる動画が公開されていた。「Viktor」はKPV重機関銃が1台につき2機搭載されている。チェコのボランティア団体が市民に寄付を呼びかけていた。3月末にも15台がウクライナ軍に提供されていた。合計115台の「Viktor」がウクライナ軍に提供される。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。特にロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」を多く利用してウクライナの軍事しs津や民間インフラなどを攻撃している。

2022年10月からロシア軍はイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で攻撃している。さらにロシア軍は国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義(軍事目標のみを軍事行動の対象としなければならない)を無視して文民たる住民、軍事施設ではない民間の建物に対して攻撃を行っていた。ウクライナの一般市民の犠牲者も出ていた。

ウクライナ軍はロシア軍のイラン製軍事ドローンを迎撃するために、専用車「移動式ドローン迎撃車」を開発して、警報が鳴ると、標的付近まで専用車で向かっていき車やバンの後方部に設置している機関銃や地対空ミサイルで迎撃して破壊する「移動式ドローン迎撃部隊」もつくった。また2022年10月にキーウをイラン製軍事ドローンが襲撃してきたときは、キーウの警察官らは小銃(ライフル)で迎撃して破壊していた。さらに高いビルの屋上にマキシム機関銃を設置してイラン製軍事ドローンを迎撃している部隊もいる。

5月になってもロシア軍によるイラン製軍事ドローンやロシア製軍事ドローンでの奇襲は止まっていない。ウクライナ軍では自らが開発したり改造して作った「移動式ドローン迎撃車」や、このように各国から提供されたものでロシア軍のイラン製軍事ドローンを迎撃している。ロシア軍のドローンが近づいてきたというサイレンが鳴ると運転手が「移動式ドローン迎撃車」を運転してその場所へ向かい、車両の後方に設置した重機関銃を撃つ別の兵士が上空のドローンを迎撃する。

重機関銃には大量の弾丸があるが、大量の軍事ドローンでいっきに襲撃してきたり、ミサイルと軍事ドローンの両方で攻撃してきたりしたら非常に危険で常に命がけである。2022年末からウクライナ軍では多くの「移動式ドローン迎撃車」を使用している。悪天候の日や夜など視界不良の時には上空の攻撃ドローンを探知して迎撃することは困難である。そしてこのような「移動式ドローン迎撃車」自体が神風ドローンの標的にされてしまう。神風ドローンが突っ込んできて爆発する前に、神風ドローンを探知したらすぐに攻撃しないといけない。

▼チェコの市民から寄付された「移動式ドローン迎撃車"Viktor"」がウクライナに到着

▼チェコの市民から寄付された「移動式ドローン迎撃車"Viktor"」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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