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アウシュビッツで殺害されたユダヤ系ドイツ人画家を描いたアニメ映画「シャルロッテ」フランスで公開

佐藤仁学術研究員・著述家
(Everett Collection Inc)

第2次世界大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人やロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。ホロコーストの生存者や当時の様子など実話に基づいた映画やドラマは毎年欧米で製作されている。

2022年11月からフランスでホロコースト時代のドイツのユダヤ人の画家シャルロッテ・サロモンをテーマに扱ったアニメ映画「Charlotte(シャルロッテ)」が2022年11月からフランスで公開される。2021年に制作されてトロント国際映画祭でプレミアム公開されて2022年4月にカナダで公開されていた。

シャルロッテ・サロモンはユダヤ系ドイツ人で1917年に生まれたが、ユダヤ系ということでナチスドイツに捕らえられて1943年10月にアウシュビッツ絶滅収容所でガス室で処刑されてしまった。そのシャルロッテ・サロモンの生涯をアニメで描いた作品。

▼「Charlotte(シャルロッテ)」オフィシャルトレイラー

ホロコースト教育でも多く使用される短編アニメ映画

ホロコーストを題材にした映画やドラマはほぼ毎年製作されている。今でも欧米では多くの人に観られているテーマで、多くの賞にノミネートもされている。日本では馴染みのないテーマなので収益にならないことや、残虐なシーンも多いことから配信されない映画やドラマも多い。たしかに見ていて気持ちよいものではない。

ホロコースト映画は史実を元にしたドキュメンタリーやノンフィクションなども多い。実在の人物でユダヤ人を工場で雇って結果としてユダヤ人を救ったシンドラー氏の話を元に1994年に公開された『シンドラーのリスト』やユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン氏の体験を元にして製作され2002年に公開された『戦場のピアニスト』などが有名だ。史実を元にした映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の授業で視聴されることも多い。

一方で、フィクションで明らかに「作り話」といったホロコーストを題材にしたドラマや映画も多い。1997年に公開された『ライフ・イズ・ビューティフル』や2008年に公開された『縞模様のパジャマの少年』などはホロコースト時代の収容所が舞台になっているが、明らかにフィクションであることがわかり、実話ではない。

作品もデジタル化され後世に

このアニメ映画「Charlotte(シャルロッテ)」も実際に存在したユダヤ系ドイツ人画家のシャルロッテ・サロモンの生涯を描いたノンフィクションである。ノンフィクション映画やドキュメンタリーはホロコースト教育の教材にも活用されやすい。特にアニメ映画は子供向けや学生向けのホロコースト教育には最適である。このようなデジタル化されたアニメ映画を通じてホロコースト時代の経験と記憶を後世に伝えようとしている。

戦後約80年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。ホロコースト生存者は現在、世界で約24万人いる。彼らは高齢にもかかわらず、ホロコーストの悲惨な歴史を伝えようと博物館や学校などで語り部として講演を行っている。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。デジタル化された証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。ホロコースト映画をクラスで視聴して議論やディベートなどを行ったり、レポートを書いている。そのためホロコースト映画の視聴には慣れている人も多く、成人になってからもホロコースト映画を観に行くという人も多い。またホロコースト時代の差別や迫害から懸命に生きようとするユダヤ人から生きる勇気をもらえるという理由でホロコースト映画をよく見るという大人も多い。

世界中の多くの人にとってホロコーストは本や映画、ドラマの世界の出来事であり、当時の様子を再現してイメージ形成をしているのは映画やドラマである。その映画やドラマがノンフィクションかフィクションかに関係なく、人々は映像とストーリーの中からホロコーストの記憶を印象付けることになる。

シャルロッテはナチスドイツに逮捕される前までに多くの芸術作品を残していた有名な画家だった。そのため描かれた作品、残された写真なども多く映画も制作されやすい。

ホロコースト時代に殺害された著名人の1人としてシャルロッテは多くのテレビ番組などでもよく取り上げられている。また彼女の作品が好きという人も多いので講演会でもよく語られている。今でも美術研究や絵画研究でシャルロッテを研究されている方はいる。多くの方にシャルロッテの作品は今でも愛されており、多くの作品がバーチャルツアーのような形式や講義などでデジタル化されて鑑賞されている。

▼デジタル化され後世に伝えられるシャルロッテの写真、作品

▼シャルロッテに関する講演会(カリフォルニア大学)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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