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アンネ逮捕から78年「アンネのビデオ日記」英語版公開:アンネがYouTubeで伝えるホロコースト

佐藤仁学術研究員・著述家
(アンネ・フランクハウス提供)

第2次大戦時にナチスドイツがユダヤ人を迫害、約600万人を殺害したホロコースト。そのホロコーストの象徴的な存在が、アンネ・フランク。アンネ・フランクはナチスの迫害を逃れて、オランダのアムステルダムの隠れ家に身を潜めて生活をしていたが、密告によって逮捕され、強制収容所に送られ、戦争が終結する直前に収容所で死亡。隠れ家に隠れていた時の生活や思いを綴った日記が戦後になって発見され、ホロコーストを生き延びることができた父オットー・フランクによって「アンネの日記」として出版。今でも世界中の人々に読み継がれている。

アムステルダムにはアンネ一家らが身を潜めていた家があり、現在でもアンネ・フランクハウスとして世界中から多くの観光客が訪問している。アンネ・フランクハウスではEvery Mediaと提携して、「アンネの日記」の動画版「アンネのビデオ日記(Anne Frank video diary)」を制作し、2020年3月30日からYouTubeで公開している。シーズン1ではアンネ・フランク一家が隠れ家に隠れて、逮捕されるまでがエピソード15まで公開されていた。

2021年8月からシーズン2が公開された。シーズン2では逮捕後のアンネ・フランク一家の収容所での生活の様子を動画で伝えている。この動画はアンネの生活のリアリティを伝えるために、アンネが話していたオランダ語で配信されている。

そして2022年8月4日からシーズン2の収容所生活編の英語版の配信も開始された。1944年8月4日は密告されナチス親衛隊(SS)に隠れ家を発見され、隠れ家住人は全員が強制収容所へと移送された日で、今年で78年目。

「アンネの日記」は今までにも欧米を中心に世界中で舞台やテレビドラマ、映画などに制作されて放映されてきた。今までのテレビや映画などで放映されてきた「アンネの日記」は実際の日記に忠実に描かれてきたが、今回アンネ・フランクハウスが制作した動画は、1940年代のナチス支配下のアムステルダムでアンネ自身がビデオを回して動画を撮影しながら、隠れ家での生活や思いを伝えている構成になっている。

戦後75年が経ち、ホロコーストの生存者らは高齢化してしまい、当時の様子を伝える人が少なくなってきている。歴史的な遠い話になってしまっているために、欧米やイスラエルではホロコーストの記憶のデジタル化を積極的に進めている。ホログラムで生存者とインタラクティブに会話をしたり、VRで収容所の様子を伝えるなどの取組みが行われている。

ネット動画で当時の様子を伝えることも、ホロコーストという歴史の伝達手段の1つで注目されている。2019年には、ホロコーストの当時インスタグラムがあったらという設定で、ホロコースト経験者の実話を元にしたインスタグラムの動画「Eva.stories」が公開された。

「アンネのビデオ日記」も、このインスタ動画「Eva.stories」と似ており、アンネが動画を撮影して当時の生活や思いを伝えており、史実にも忠実だ。

今まではオランダ語だったのでアンネのリアリティを伝えることはできたが、見て理解できる人は限られていた。英語版の配信が開始されることによって多くの人が見ることができるようになり、ホロコースト教育でも活用が期待されている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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