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アンネ・フランク93歳の誕生日「アンネの日記」書き始めた13歳から80年:進むアンネのデジタル化

佐藤仁学術研究員・著述家
(アンネフランク財団提供)

1929年6月12日はアンネ・フランクの誕生日。第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスの標的となり迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネ・フランクが生きていたら2022年6月12日で93歳になっていた。

アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版して今年で75年。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。アンネ・フランクが1942年6月12日の13歳の誕生日に送ってもらった日記帳で日記を書き始めたので2022年で80年になる。

現在でも世界中で多くの人に読まれている。またアンネ・フランクは世界中の老若男女にも人気がある。世界中の若者に人気のインスタグラムには世界中のアンネ・フランクのファンがアンネの当時のモノクロ写真や、アムステルダムにある「アンネの家」を訪問した写真をたくさん投稿している。

アンネ・フランクの生涯は「アンネの日記」を元にした映画、ドラマ、演劇、アニメ、マンガなどで世界中で作品の題材として取り上げられ、演じられている。それらはアンネの生涯を忠実に描いたノンフィクションである。

映画・YouTubeドラマ・VR・ストリートビューなど進むデジタル化

戦後75年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。そしてデジタル化された証言や動画や映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。

アンネの隠れ家を運営しているアンネ・フランクハウスはアンネ・フランクを紹介するためのデジタル化したコンテンツ製作にとても積極的で、アンネ・フランクが生きていた時代の貴重な動画を公開したり、アンネ・フランクが当時スマホを持っていて動画を撮影するというWEBドラマシリーズ「Anne Frank video diary」を製作しYouTubeで配信。アンネ・フランクの生涯を次世代の若者に伝えようとしている。またアンネの家をVR(仮想現実)で廻れるサービスもメタと共同で制作した。特にコロナ禍になってアムステルダムのアンネの家を訪問できなくなってからはオンラインでの様々な情報やコンテンツ提供にも注力してきた。

アンネ・フランクハウスだけでなく2019年に90歳のアンネの誕生日の6月12日には、Googleがアンネフランク博物館と協力して、アンネが隠れ家に潜む前に子供時代を過ごした家、家族の思い出の写真、貴重な映像などを紹介するコンテンツを「Google Arts & Culture」で公開した。当時の貴重な写真や映像をデジタル化して公開、家の中をストリートビューで閲覧することができる。

欧米ではホロコースト教育が行われており、アンネの日記や映画などはホロコースト教育でも多く利用されている。ホロコースト教育ではホロコーストだけでなく、欧米で今も根強い反ユダヤ主義をなくすためにも行われている。そして最近では反ユダヤ主義だけでなく、ムスリムやアジア系への差別撤廃やLGBT問題など幅広な差別や不平等などがホロコースト教育を通じて行われている。

▼アンネが生前、隠れ家に潜む前の貴重な動画(アンネフランク博物館)

▼アンネの家のVR

▼「Anne Frank video diary」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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