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ロシア軍、恐怖の神風ドローン「ZALA KYB」で爆撃:ウクライナ軍は被害動画を公開し警戒呼びかけ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

静かに飛行してきて上空から標的に突っ込み爆破

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

ウクライナ軍は2022年5月にロシアの軍事ドローン「ZALA KYB」が攻撃を行い爆発した動画を公開した。ウクライナ軍は自身がロシア軍に攻撃を行って成功した動画や写真もSNSで公開しているが、このようにロシア軍がウクライナ軍に対して攻撃を行い、ウクライナが被害に遭った様子もSNSで多く伝えている。

今回、ロシア軍が攻撃に使用したのはロシアのZALA Aeroグループが開発した『ZALA KYB』と呼ばれる中型攻撃ドローン。「KYB」は3キログラムまでの爆薬が搭載可能。時速130キロで30分の飛行が可能。攻撃イメージの動画も公開しており、そこでも垂直に上空から標的に突っ込んでいき破壊する様子を伝えている。

「KYB」の特徴の1つは静かに飛行することが可能なこと。地上の人間や装甲車が攻撃ドローンに気がついて避難できないようになっている。つまり地上にいる人間は目視やレーザーなどでしかドローンが近づいてきていることに気が付くことができない。

そして「KYB」が静かに上空からやってきて、標的に向かって垂直に突っ込んできて爆破してしまう。静かに上空からひっそりとやってくることはとても重要で、ドローンは商用でも軍事用でもバリバリと大きな音を立てて飛行していると敵にすぐに察知されやすく攻撃する前に迎撃されて撃墜されやすい。

「どんなドローンでも検知したらすぐに破壊か機能停止を」

攻撃ドローンは「kamikaze drone(神風ドローン)」、「Suicide drone(自爆型ドローン)」、「kamikaze strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンの名前に「神風」が使用されるのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン(Kamikaze Drone)」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。今回のウクライナ紛争で「神風ドローン」は一般名詞となり定着した。ウクライナ語では「Дрони-камікадзе」(神風ドローン)と表記されるが、ウクライナ紛争を報じる地元のニュースで耳にしたり目にしたりしない日はないくらいだ。ウクライナ軍のSNSにも英語で「ZALA KYB kamikaze UAV」と書かれている。

攻撃ドローンが上空から地上に突っ込んできて攻撃をして破壊力も甚大であることから大きな脅威だ。ウクライナ軍も「攻撃ドローンは命中しないで爆破に失敗することも多いが、決して過小評価してはいけない。どのようなドローンでも検知したらすぐに爆破させたり機能停止させるべきだ」と警告していた。

ロシア軍は小型の偵察ドローンで偵察を行っているが、偵察ドローンに居場所を探知されてしまうとすぐにミサイル弾などが大量に飛ばされてきて大きな被害が出るので、小型の偵察用ドローンだから無視しても良いということは絶対にない。

▼「ZALA KYB」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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