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ウクライナがロシア攻撃に利用しているトルコの軍事ドローン企業の「AKINCI」水上の標的攻撃に成功

佐藤仁学術研究員・著述家
攻撃ドローン「AKINCI」(バイカル社提供)

「既に2か国への輸出が決定」地元メディアはウクライナかパキスタンと報道

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいるが、バイカル社はその中でも代表的な企業である。同社の軍事ドローン「バイラクタル TB2」はウクライナ紛争でウクライナ軍も活用しており、ロシア軍に上空から攻撃してロシア軍の侵攻阻止にも貢献している。

そのバイカル社が開発している攻撃ドローン「AKINCI」が水上の標的に攻撃する試験に成功した。動画も公開している。バイカル社は、具体的な国名は上げていないが、既に2か国への輸出が決定しているとツイッターで明らかにしている。トルコの地元メディアはウクライナ、パキスタン、もしくはアゼルバイジャンが購入するのではないかという推察をしていた。

ウクライナ軍がロシア軍の侵攻阻止のために活用している軍事ドローン「バイラクタル TB2」はウクライナだけでなく、ポーランド、ラトビア、アルバニア、アフリカ諸国なども購入。アゼルバイジャンやカタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。

「バイラクタルTB2」を称えた音楽も登場して、ロシア軍侵攻阻止のシンボル的な存在となっておりウクライナ国民の士気を高めている。紛争勃発直後の2022年2月27日に「バイラクタルTB2」がキーウ北西約100キロの町でロシア軍の進軍を防ぐことに成功したと発表。軍事ドローンがロシア軍の装甲車を破壊する動画も公開していた。

ウクライナ軍に提供されている軍事ドローンは、ロシアにとっても大きな脅威になっている。実際にウクライナに侵攻してきたロシア軍への攻撃に利用された。ウクライナのゼレンスキー大統領とトルコのエルドアン大統領は2022年2月、ロシアが侵攻してくる前に共同会見を開催。その際、ゼレンスキー大統領はエルドアン大統領に向かって「ドローン開発技術はウクライナの防衛力強化になります」と語っていた。

ロシア軍がウクライナに侵攻してから、両国ともに軍事ドローンによる上空からの攻撃が続いている。ロシア軍はロシア製の軍事ドローン「KUB-BLA」で攻撃を行っており、ウクライナ軍はトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」だけでなく、アメリカが提供した「スイッチブレード」、またバイデン政権は新たな軍事ドローン「フェニックス・ゴースト」も提供。さらに英国が提供している攻撃ドローンも活用している。これだけ多くの軍事ドローンが上空から敵陣を攻撃する紛争は世界史上初めてだろう。

▼2か国が「AKINCI」購入を予定していることを述べるツイート

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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