ホロコースト生存者のアハロン・バラク元イスラエル司法長官のドキュメンタリーアニメ公開
第2次世界大戦時にナチスドイツによって約600万人のユダヤ人が殺害された、いわゆるホロコースト。イスラエルにはホロコースト犠牲者を追悼したヤド・ヴァシェムという博物館がある。
ヤド・ヴァシェムは2022年2月に「The Story of Aharon Barak: A Holocaust Story」(「アハロン・バラクのホロコーストの物語」)というドキュメンタリーアニメを公開した。
アハロン・バラク氏はイスラエルの元司法長官で1936年にリトアニアで生まれたユダヤ人。ナチスドイツが侵攻してきてゲットーに閉じ込められて、いずれ殺害される時に布袋に隠れてゲットーから脱出することに成功して、母親とともに戦争が終わるまでリトアニア人の農家の家に匿ってもらい生き延びることができた。そして戦後にイスラエルに移住してきて、イスラエルの司法長官や最高裁判所の裁判官に就任した。
アハロン・バラク氏は現在も存命でドキュメンタリーアニメの最後には、本人がスマホの画面から登場してきて、当時の思い出を語ったり、戦後に匿ってくれていたリトアニア人の農家を訪ねるシーンでも登場している。
欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われており、このドキュメンタリーアニメも子供向けのホロコースト教育に活用されている。ヤド・ヴァシェムでは約480万人のホロコースト犠牲者のデータベースがあり、それらは世界中からネット経由で閲覧することもできる。約600万人のユダヤ人が殺害されたが、残りの120万人は名前が判明していない。第2次世界大戦が終結して70年以上が経過し、ホロコースト生存者の高齢化が進んできた。生存者が心身ともに健康なうちにホロコースト時代の経験や記憶を証言として動画で録画してネットで世界中から視聴してもらう「記憶のデジタル化」が進められている。
このドキュメンタリーアニメも「記憶のデジタル化」によるホロコーストの歴史の継承の取組の1つだ。アハロン・バラク氏は戦後のイスラエル史においても重要なポジションである司法長官を務めた欧米やイスラエルでは有名な方だ。
ホロコーストの記憶や経験の証言は様々な形式で伝えられている。1つはホロコースト生存者自らが証言を語るというパターンで一番よく見かける。もう1つは子供など家族がホロコーストを経験した両親の話を伝えるパターンで、既に他界してしまった生存者の家族が生前に聞いた話を伝えている。また生存者自身がホロコーストの経験を思い出したくもなく、動画撮影などで語りたがらないので代わって家族が伝えていることもよくある。他には全くの第三者のナレーターが文書などで書かれた生存者の経験や記憶を伝えているパターンもよく見られる。
この3パターンがほとんどだが、このドキュメンタリーアニメ動画では祖母と孫が登場してきて、アハロン・バラク氏のホロコースト時代の経験と彼の生涯をアニメと当時のリトアニアのゲットーの貴重な動画や写真で伝えて、本人が最後に少しだけ登場してきているという珍しいパターンである。アハロン・バラク氏は著名な法律家で学者としても自身のホロコースト時代の記憶や経験、人権の重要性を多くの場所で語り継いできている。
▼アハロン・バラク元司法長官とネタニャフ元イスラエル首相