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AI専門家「AI技術の軍拡ではアメリカと中国のどちらが優位かわかりません」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2021年10月に米国メディアのCNBCに人工知能(AI)専門家のカイフ・リー氏が出演。アメリカと中国のAI技術について自身の見解を語っていた。カイフ・リー氏はマイクロソフト、Google、Appleなどで技術開発に従事。

カイフ・リー氏によると「アメリカの方が学術的な観点からのAI技術の研究は中国よりも進んでいます。中国はAIの商用化、実用化はかなり速いです。あと中国はAI技術に必要なデータや情報をたくさん保有しています」と語っていた。

またAI技術が軍事分野で活用されることについて「私はAIの専門家で、戦争の専門家ではないですが」と前置きして「世界中のAI科学者らが、AI技術を搭載して人間の判断を介さないで人間を標的にして攻撃して精確に暗殺や殺害できる自律型殺傷兵器の使用を懸念しています。あらゆるAI科学者の間でも、あらゆる国々がAI技術を軍事に活用した軍拡競争に入っていることを懸念しています。AI技術の軍事利用での軍拡競争は大きな脅威です。AI技術の軍事競争、自律型殺傷兵器の軍拡におていアメリカが優位か中国が優位かは、わかりません。両国とも自律型殺傷兵器の開発過程を明かしていませんので」と語っていた。

トルコのような第三極の台頭も

人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアやアメリカ、イスラエル、韓国などは反対していないので、積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。

また2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。実戦で使用されたと報じられていた自律型殺傷兵器の攻撃ドローンはトルコ製で、米国でも中国でもない。カイフ・リー氏が指摘しているように自律型殺傷兵器の軍拡においては米国や中国のどちらが優位なのかは不明である。そして軍事で使用されるAI技術は、核兵器開発のように困難ではないことから、トルコのような第三極が台頭してくることも大いにありえる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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