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ロシア軍事企業 AI搭載の70キロ先の敵地まで攻撃可能な軍事ドローン開発

佐藤仁学術研究員・著述家
(バイタリー・クズミン提供)

ロシアの軍事企業のクロンシュタットは「Grom(グロム)」というロシア語で雷を意味するドローンを2021年9月に発表した。中長距離ドローンとしてロシア軍に提供される予定。グロムはミサイルを搭載して敵へミサイル発射を行って攻撃するドローン。人口知能(AI)技術も搭載しており、人間の軍人が操作しなくても運航が可能。攻撃だけでなく偵察も可能。燃料補給なしに700キロの飛行が可能。そして3~70キロ先の敵地までミサイルでの攻撃が可能。ドローン自身が突っ込んでいき攻撃を行う、いわゆる「神風ドローン」ではなく、搭載したミサイルを発射するタイプ。

グロムはAIも搭載しているが、オペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、基本的には攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAIを搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行う兵器は、自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製のKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。

ドローンが敵の標的を察知してから、遠隔地の人間が判断するまでに時間差があり、敵を逃がしてしまったり逆襲されたりすることもありうるので、自律型殺傷兵器のように敵を認識したら即座に攻撃を仕掛けられる方が効率が良いという意見もある。また、遠隔地にいるとはいえドローンでの攻撃の判断を行い、敵を殺害する人間にも精神的な負担がある。さらに攻撃側の軍人にとっては戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の"人間の安全保障"は確保されるようになる。

一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

(バイタリー・クズミン提供)
(バイタリー・クズミン提供)

(バイタリー・クズミン提供)
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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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