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米国議員 ホロコーストに例えて「レストランに入るのにワクチンパスポートが必要ではこの国に自由はない」

佐藤仁学術研究員・著述家
(トーマス・マシー下院議員ツイッターより)

「ワクチンパスポートを持っていないと、どこのレストランにも入れなかったり、どんな場所に行けなかったり、イベントにも参加できないようでは、この国にはもう自由はありません」

米国ケンタッキー州の共和党下院議員のトーマス・マシー氏が新型コロナウィルスによるワクチン接種の政策について、ホロコースト時代のナチスドイツの政策に例えて炎上していた。

トーマス・マシー氏は自身のツイッターで「ワクチンパスポートを持っていないと、どこのレストランにも入れなかったり、どんな場所に行けなかったり、イベントにも参加できないようでは、この国にはもう自由はありません」と書いて、一緒に腕にナチス時代の強制収容所でユダヤ人らが入れ墨をされていた囚人番号のような写真も一緒に投稿していた。

ナチスドイツのユダヤ人政策は「労働を通じた絶滅」だったので、ユダヤ人は強制収容所に到着すると、働けるか働けないかの「選別」がされた。働けないと判断された老人や子供はすぐにガス室に送られて殺害された。働けると判断されたものは、体中の体毛を剃られて、腕に囚人番号の入れ墨を入れられた。人間性の象徴である名前を失い、その瞬間から腕に入れられた入れ墨の番号で管理されるようになった。強制収容所に収容されていたホロコースト生存者たちは、戦後も入れ墨を見せたくない、見られたくないことから長袖を着て入れ墨を隠していた。

つまりトーマス・マシー下院議員は「ワクチンを接種したくないのに、ワクチン接種を強要されて、ワクチンパスポートがないとレストランにも入れず、イベントにも参加できないことは、ナチス時代の強制収容所に収容されたユダヤ人が囚人番号を入れ墨されて、ナチスに管理されてしまうことと同じ」だと主張していた。

このワクチン接種を強要されてワクチンパスポートがないとレストランなどにも入れないことをホロコースト時代のユダヤ人に例えた投稿に「新型コロナウィルス感染防止のためのワクチン接種をホロコーストと比較するのはおかしい」「殺害されたユダヤ人に失礼だ」とネットが炎上していた。そしてトーマス・マシー氏も自身で投稿を削除した。

ホロコーストに例えられやすい新型コロナウィルス対策

欧米では「ロックダウンで外出が制限されたり、マスクの着用を義務付けられたり、ワクチン接種を強要されたりといった、不自由な生活=ホロコースト時代のユダヤ人がゲットーに閉じ込められて迫害された不自由な生活」、「政府による強制的なロックダウンやマスク着用、ワクチン接種の強要=ナチスドイツの全体主義」というイメージを持つ人が多い。

そして欧米では新型コロナウィルスのパンデミックの不自由な状況やマスク着用、ワクチン接種の義務化をホロコーストに例えるたび、当時のユダヤ人の悲惨な境遇や生活とは異なると、「ホロコーストに例えることは犠牲になったユダヤ人に失礼だ」「迫害されていたユダヤ人とは状況が違う」などと言われていつもネットで炎上している。

(トーマス・マシー下院議員ツイッターより)
(トーマス・マシー下院議員ツイッターより)

トーマス・マシー下院議員

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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