Yahoo!ニュース

ロシア 300メートル潜水可能な「自律型水中ドローン」開発:偵察目的だが攻撃も可能に

佐藤仁学術研究員・著述家
展示されていた自律型水中ドローン(ニコライ・ニヴィコフ提供)

2021年8月にロシアのモスクワで国際軍事テクニカルフォーラム2021が開催されていた。そのなかでロシアの軍事企業のギドロプリボールが自律型水中ドローンを展示していた。この水中ドローンは海底偵察を自律的に行うことができる。

同社のミハイル・ケッツウィヴ氏は「この自律型水中ドローンは、海底での偵察、測量、敵の電磁波を妨害する電子戦を自律的に行うことができます。操縦用のソフトウェアをインストールすれば人間が操縦することも可能です。偵察目的なので、時速1.5キロで決して速くないですが300メートル深くまで潜水可能です。また海底で未確認物体を発見した場合には、水中ドローンが接近して掘削することもできます」と説明していた。具体的な利用開始時期は明らかにしていない。

この水中ドローンは敵の潜水艦を海中で発見しても自律的に攻撃は行わないようだ。だが海底で未確認物体を発見した時にこのドローンが掘削できることは、敵の潜水艦への攻撃も不可能ではないだろう。

AI技術の発展によって軍事でも積極的に活用されるようになってきている。それによって兵器の自律化も進んでいる。ロシアだけでなくアメリカ、中国、インド、イスラエルなどでもAI技術を軍事に活用している。

AIを搭載し、人間の判断を介さないで標的の人間を攻撃する自律型殺傷兵器が開発されようとしている。国連の安全保障理事会の専門家パネルでは、自律型兵器によってリビアで人間が殺害された可能性があると報告していた。

人間の判断を介さないで標的の人間を攻撃して殺傷することが非倫理的、非道徳的であることから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアは反対していない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事