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米国陸軍大将「人間の判断を待つよりもAIの判断で攻撃を」神風ドローンの大群による一斉攻撃を危惧

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

進む兵器でのAI活用

 AI(人工知能)技術の軍事分野での活用で、自律型の兵器の開発は進んできている。人間の判断を介さないでAI技術を搭載した兵器自身が判断して標的に攻撃を行うことが非倫理的であると国際NGOや世界の30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用に反対を訴えている。アメリカは反対していないで、むしろ積極的に自律型の兵器の開発を進めており、すでに海軍などがいくつかの兵器のプロトタイプも公開している。一方で、AIの軍事利用においてアメリカ国防総省は人間の判断が入ることをDoDD 3000.09でも明記しており、兵器自身が判断して標的を攻撃しないようにしている。

 だがアメリカ陸軍将来コマンド(United States Army Futures Command)の大将で兵器の近代化のトップを務めているジョン・マレー氏は2021年2月に「攻撃型ドローンの大群が一斉に攻撃してきた時には人間の判断を待っていたら、防衛することができません。人間の判断で攻撃を行うよりも、AIが瞬時に判断して攻撃や防衛を行うことが重要になります」と語っていた。国防総省は標的を殺傷して、相手の生死に関わる兵器の使用においては人間の判断が必ず入ることが重要であると強調しているが、マレー氏は「攻撃型ドローンの大群が上空から攻撃をしかけてきたら、迎撃と攻撃において人間の判断を待っているのは不可能だろうし、とても厳しい状況になります。味方の人間を守るという観点からAIが敵を攻撃するという非倫理的な判断をするのに、どのくらい人間の関与が必要でしょうか?」と語っていた。

「AIの方が人間よりも安全に運用できる」

 またマレー氏は「人間の軍人が80%の確率で正しい判断をするなら、その軍人は殺傷的な兵器を使用して攻撃をするでしょう。我々が訓練を行っている兵器のオペレーターや軍人は98%から99%の確率で正しい攻撃の判断を行い、攻撃をします。AIは多くの観点で人間の軍人よりも、もっと安全に兵器を運用できるでしょう。将来の戦争においては、兵器の動向がもっと迅速で活動的になるでしょう。そうなると人間の判断で攻撃をするのでは、相手からの攻撃に追いつくことはとても難しくなります」と語っていた。

 アメリカだけでなくロシアや中国、イスラエル、英国などでAI技術の軍事への活用は進められている。また最近では「神風ドローン」と呼ばれる標的を認識すると、標的に突っ込んでいき爆破するドローンが紛争でも活用されている。2020年のアゼルバイジャンとアルメニアの紛争でもアゼルバイジャンがイスラエル製の「神風ドローン」を使用していた。また「神風ドローン」は低価格で、ドローンなので攻撃側の人的なリスクは少ない。攻撃を受ける方が脅威である。アメリカのような大国であっても、小国が大量の「神風ドローン」で上空から攻撃をしかけてきたら、甚大な被害を受けることになる。

 そのような「神風ドローン」が上空から攻撃をしかけてきた場合は、マレー氏が述べているように人間の判断を待ってから迎撃や相手への攻撃を行っていては、敵にやられてしまう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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