ユニセフ 公開書簡でデジタルデバイド解消を訴え「パンデミックが終わってもリモート学習は重要」
新型コロナウィルス感染拡大に伴う子供たちへの影響について国連児童基金(ユニセフ)が年次公開書簡を2021年2月に公開した。公開書簡の中で、ワクチンへの信頼、若者や子供のメンタルヘルス問題、差別との戦い、気候変動問題、そしてデジタルデバイドの解消について述べていた。
デジタルデバイドの解消について、ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォア氏は「オンライン学習の設備の充実が重要です。パンデミックが終わってからも、リモート学習は教育へのアクセスと柔軟な教育の提供において重要なツールになります」と語っていた。
ユニセフによるとパンデミックで世界的にロックダウンが進み、学校が閉鎖されてリモート学習が導入されても、世界の学齢期の子供の約30%がリモート学習で授業を受けたり、勉強することができなかった。また、途上国の10歳以下の子供の50%以上が読み書きできないこと、学校卒業までに簡単な物語の本を最後まで読むことができないと指摘し、世界規模で教育を再構築し、デジタルデバイドを解消していくことを訴えていた。公開書簡の中で、全ての世界中の子供たちが学校とインターネットにアクセスして教育を受けられるためにも、新しいデジタルツールの提供とデジタルスキルの開発をしていかないといけないと伝えていた。そして政府が学校の安全な再開をすることと、全ての子供たちへの教育の提供を優先することを訴えていた。ユニセフでは教育用のデジタルツール提供に向けた取組も行っており、2021年末には5億人、2030年までには35億人が利用できることを目指している。
日本でも新型コロナウィルス感染拡大によって2020年には多くの学校が休校になり、オンライン学習が導入された。小中学校は再開したが、大学では今でもオンライン学習が主流だ。日本だけでなく世界中で新型コロナウィルス感染拡大によって学校が閉鎖され、オンライン学習やリモート学習が導入されたが、特に途上国では自宅にネットの回線がないこと、パソコンだけでなく学習用のスマホやタブレットを所有していないこと、たとえスマホを所有していても長時間の授業を受けられるほどの通信費を払えない子供が多い。
そのような子供たちは学校が閉鎖されてしまうと、教育を受ける機会はゼロになってしまい、また家計を助けるために働かざるをえない。さらに様々な犯罪に巻き込まれる可能性もある。そして学校が再開されても、授業についていけなかったり、仕事をやめるわけにいかずに学校をやめてしまうことも多い。そしてたとえスマホやタブレットなど機器や回線のデジタルツールが整備され、リモート学習が可能な環境になったとしても、家では家族が多くて、狭くて自分の部屋もなくてオンライン学習で授業を受けられない子供も多い。日本でも公開されているインド映画などでスラム街を舞台にした映画を見たことがある人は、スラム街の子供たちは自分の家では狭くて家族も多くて、とても子供全員が自分の家でリモート学習を受けるのは難しいと想像できるだろう。
さらに授業は学校で受けるものという思い込みがあり「家にいるなら働いて家計を助けろ」とリモート学習に対する理解を示さない保護者への対応も必要になってくる。デジタルツールの整備が完了しても、家でリモート学習ができない現在の環境と保護者のリモート学習への理解を得ることへの対応が重要になってくる。