イスラエルのヤド・ヴァシェム、Facebookと連携して犠牲者追悼:国際ホロコースト記念日に向けて
第2次世界大戦時にナチスドイツによって約600万人のユダヤ人が殺害された、いわゆるホロコースト。イスラエルにはホロコースト犠牲者を追悼したヤド・ヴァシェムという博物館がある。ヤド・ヴァシェムでは毎年ホロコーストの犠牲者を追悼したイベントを1月27日の国際ホロコースト記念日に開催している。今年は新型コロナウィルス感染拡大によってリアルでのイベントが開催できないため、オンラインでの開催となる。1月27日は旧ソ連軍によってアウシュビッツ絶滅収容所が解放された日であり、国際ホロコースト記念日に制定されている。
Facebookを通じてホロコースト犠牲者のストーリーをシェア
またヤド・ヴァシェムでは、今年の国際ホロコースト記念日でも、Facebookと連携して「IRemember Wall」と呼ばれるバーチャルウォールを提供する。バーチャルウォールとは、ヤド・ヴァシェムの特設サイトを訪問すると、ホロコーストの犠牲になったユダヤ人の方々の写真と名前があり、ランダムに犠牲になったユダヤ人が表示される。そのランダムに表示されたホロコースト犠牲者の写真、名前、職業、家族構成、その人がどのような人生を送ったのかといったパーソナルストーリーを自分のFacebookページでシェアして、Facebookを閲覧している友人や知人にもホロコースト犠牲者のことを知ってもらい、ホロコーストの歴史を振り返ってもらうことが狙いである。
ヤド・ヴァシェムのコミュニケーション担当ディレクターのアイリス・ローゼンバーグ氏は「Facebookと連携することによって、世界中の多くの人たちにホロコースト犠牲者の情報を提供することができるようになりました。現在のような複雑な世の中でこそ、殺害されたユダヤ人の思い出を振り返ってもらいたい」と語っている。
「IRemember Wall」は昨年の国際ホロコースト記念日でも実施。昨年は世界175ヶ国からの人が参加して85,000人のユダヤ人犠牲者の情報がFacebookで拡散された。FacebookのCOOのシェルリ・サンドバーグ氏は「ヤド・ヴァシェムと連携して、ナチスドイツによって殺害された数百万人の人々の個人的なストーリーをシェアできるようなプロジェクトが出来ることが光栄です」とコメントを寄せている。
ヤド・ヴァシェムでは約480万人のホロコースト犠牲者のデータベースがあり、それらは世界中からネット経由で閲覧することもできる。約600万人のユダヤ人が殺害されたが、残りの120万人は名前が判明していない。第2次世界大戦が終結して70年以上が経過し、ホロコースト生存者の高齢化が進んできた。生存者が心身ともに健康なうちにホロコースト時代の経験や記憶を証言として動画で録画してネットで世界中から視聴してもらう「記憶のデジタル化」が進められている。平行してホロコースト犠牲者の身元確認とデータベース構築も進められているが、ナチスドイツによって完全に消失したユダヤ人集落などもあり、全ての犠牲者の名前や写真を収集してデータベースに格納することは難航している。