イスラエルのNGO、ホロコースト生存者が元気なうちに彼らの記憶や体験談をVRで後世に伝えたい
積極的に進められている「記憶のデジタル化」
第二次世界大戦時にナチスドイツが約600万人のダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。戦後70年以上が経過しホロコースト生存者も高齢化し、年々減少している。現在、ホロコースト生存者は1日に約40人が死亡してしまっており、近い将来、ホロコーストを体験したホロコースト生存者はゼロになる。ホロコーストの歴史を後世に伝えるために、欧米やイスラエルの大学やホロコースト博物館が高齢のホロコースト生存者らに、当時の経験や記憶を語ってもらい、それらを動画で撮影してネットで公開したり、3Dであたかも目の前にいてリアルタイムに会話ができるようなホログラムを開発するなど、記憶のデジタル化が積極的に進められている。
欧米や中東では現在でも、反ユダヤ主義が根強く「ホロコーストなんて存在しなかった」と主張されるホロコースト否定論もある。ホロコースト生存者がゼロになってしまうと、ホロコーストが本当に存在したことを証明してくれる人がいなくなり、歴史が修正されてしまうことも懸念されている。いわゆる歴史修正主義だ。そのため、ホロコースト生存者の証言を収集するのはこれから10年以内が勝負であり、欧米やイスラエルの大学やホロコースト博物館などは積極的に記憶のデジタル化を進めようとしている。
イスラエルのNGOでも、ホロコースト生存者が心身ともに元気で当時の記憶があるうちにホロコースト生存者に取材をして当時の記憶や体験語ってもらい、それをVR(仮想現実)で伝えようとしている。そのために現在、クラウドファンディングでVR撮影と制作に必要な資金を集めている。VR撮影と制作やスタッフ、資材の調達やスタジオ利用料などに莫大な資金がかかるため、世界中に資金援助を呼びかけている。
NGOのプロジェクトの名称は「NeVeR Again VR」で、NGOのロイ・フリードマン氏は祖父母がホロコースト生存者でアウシュビッツ絶滅収容所を生き延びることができて、戦後にイスラエルに渡って来た。
フリードマン氏は「VRはホロコースト生存者たちの様子をダイレクトに伝えてくれることができます。これらのVRを通じて世界中の人にホロコースト生存者の当時の経験や記憶を伝えていきたいです。ホロコースト生存者らには全員それぞれの物語があります。ある者はアウシュビッツ絶滅収容所に入れられ、ある者は森をさまよっていたり、ある者はワルシャワゲットーで飢えていました。VRを通じて彼らの当時の記憶や経験から是非多くのことを感じて欲しいです」と語っている。また今回撮影、制作されたVR動画は教育用コンテンツとして活用していくことを目指している。現在、既に8つの取材を終えて、2つがVR化されている。
▼「NeVeR Again VR」で撮影したホロコースト生存者のVR動画(ヘブライ語)