米国のコメンテーター、SNSのアカウント凍結を「デジタルゲットー」と表現
2021年1月8日にツイッターはトランプ大統領の公式アカウントを永久凍結した。さらに1月7日にはFacebookがトランプ大統領のFacebookページ、インスタグラムのアカウントを無期限停止した。1月12日にはGoogle傘下のYouTubeが暴力行為の煽動を禁止する利用規約違反としてトランプ大統領の公式チャンネルを一時停止、動画1本を削除した。また、1月6日に起きた米国連邦議会議事堂への抗議を受けて、ツイッターは陰謀論QAnon関連の投稿に使われていた7万件以上のアカウントを永久凍結した。
アメリカのFOXニュースでコメンテーターを務めるグレン・ベック氏はこのようなSNS各社のアカウント凍結の状況を「(ソーシャルメディアのような)意味ある場所で発信できないのであれば、表現の自由を奪われたのも同じだ。これではまるでナチスドイツ支配下でのユダヤ人のゲットーと同じだ。このような状況はまさにデジタルゲットー(digital ghetto)だ」と表現し「(ゲットーの)壁の外に出ないと何も自由に語ることができない。壁の中には何の自由もない。ゲットーのような自由のない場所は意味がないが、今私たちがいるのはそういう場所であり、アメリカ人はそのような意味のない場所に向かおうとしている」と語っていた。
第2次世界大戦時にナチスドイツによるユダヤ人の差別と迫害で欧州で600万人のユダヤ人が殺害された、いわゆるホロコースト。特にポーランドなどナチス支配下の東欧でのユダヤ人は自分の住居を奪われて、ゲットーと呼ばれる街の一画に強制的に移住された。
ゲットーの様子は映画「シンドラーのリスト」「戦場のピアニスト」でも表現されている。またホロコーストを生き延びた生存者らの証言を読むと多くの人がゲットーについて語っている。アウシュビッツのような絶滅収容所での画一的な死と隣り合わせの暮らしと異なり、生活は激変したがゲットーには日常生活があり、多くの人々が様々な感情を抱えて生きていた。ゲットーから外部へ出ることは仕事以外では基本的に禁止されており、ゲットーの中には狭い空間で多くの人が生活することを余儀なくされ、食糧もなく多くのユダヤ人が餓死した。また死体も多く路上に放置され、水道施設もない非衛生な環境でチフスなどの病気で死亡した。そしてユダヤ人はゲットーに一時的に隔離されて、そこからポーランドにあるアウシュビッツなどの絶滅収容所に移送されて、多くの人がガス室などで殺害された。ナチスドイツ支配下のユダヤ人はまずは黄色のダビデの星の着用を義務付けられ、公的な職業に就けなくなり、学校に行けなくなり、映画館や公園、レストランに入れなくなり、夜間外出ができなくなるなど基本的な人権や自由が剥奪されていき、強制移住でゲットーに隔離され、そこで食糧もなく餓死や病死し、そこから絶滅収容所へ移送されていった。ゲットーはいわば絶滅収容所への通過点だった。
▼グレン・ベック氏
▼1941年のワルシャワのゲットー