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英国識者、ロシアの自律型戦車の開発に懸念を表明「数分で都市を徹底的に破壊する」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「偶発的な事故から紛争に発展へ」

 英国のシェフィールド大学の人工知能の教授のノエル・シャーキー氏はロシアが開発しようとしている次世代戦車アルマータ―T-14が欧州諸国との国境付近に群れをなしてやってくるのではないかと危惧している。

 シャーキー氏は英国のメディアExpressの取材で「次世代戦車のT-14は数分で都市を徹底的に破壊する攻撃力を持っている可能性があります。そして超大国が開発しているようなキラーロボットのように脅威にもなりえます」と懸念を表明した。人間の判断を介さないでAIを搭載した兵器が、自身の判断で標的を攻撃してくるキラーロボットと称される自律型殺傷兵器が開発されることを国際NGOなどが懸念しており、開発と使用禁止を訴えている。シャーキー氏は10年以上前からキラーロボットの開発には反対している。

写真:ロイター/アフロ

「キラーロボットは間違った標的に攻撃を行ってしまうこともある」

 シャーキー氏は「T-14は現在は遠隔地からのリモートコントロールだが、ロシアはT-14の完全な自律化を目指しています。ロシアは自律型兵器を開発して、それらを欧州との国境沿いに設置したり、中国やアメリカなど敵対する国と軍拡競争を繰り広げていくでしょう」とコメント。そして「自律型のモードで、偶発的な事故や攻撃が起こって、それが原因で敵との紛争に発展しかねません。そのようなキラーロボット同士が戦ったら、どのような結果になるのか全くわかりません。また一度キラーロボット同士による紛争が勃発したら、都市は数分で徹底的に壊滅される可能性もあります」と語っていた。人間が判断しないでキラーロボットの判断による標的への攻撃を行ってしまう偶発的な事故から大きな紛争に発展する恐れがある。

 また「自律型殺傷兵器はターミネーターのような自動化されたヒューマノイドロボットではありません。キラーロボットは誰を標的にして、誰を殺害するのかの判断を行います。特にロボットでは軍人と一般市民の区別をつけることができない可能性が高く、間違った標的に攻撃を行ってしまうこともあり得ます。誰を標的にして、誰が殺害されるのかといった判断を人間でなくてロボットに委任してしまうような兵器が開発されてしまうことに強い危惧を感じます」と語っていた。人間が判断していないことからキラーロボットが攻撃をしたことの責任が誰なのかも明確ではない。

 そして「現在、ロシア、アメリカ、中国、英国、イスラエル、韓国などが陸海空軍を問わずにあらゆる領域で自律型兵器の開発を行っています。ロシアやアメリカのような超大国に自律型殺傷兵器の開発禁止を議論するようなテーブルについてもらうことはとても難しいことです。ロシアは非常に積極的に自律型兵器の開発に乗り出そうとしており、アメリカはそれを阻止しようと対抗しています。このままだとロボット兵器の開発競争に突入してしまうのではないかと危惧します」と懸念を表明していた。中国は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが開発には反対していない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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