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韓国の軍事メーカー、通信事業者と提携し5Gを活用した無人・自律型兵器開発へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 韓国の大手軍事メーカーのハンファは韓国の通信事業者KTと連携して5Gを活用した兵器開発を行っていくことを2020年10月に明らかにしMoU(覚書)を締結した。韓国は5G導入も世界に先駆けて早かった。5Gの特徴である高速大容量、低遅延、多接続を活かして無人兵器や自律型兵器の開発を行っていく。両社は特に5Gのモバイルアクセスエッジクラウドを活用した兵器開発の協力を行っていく。また両社で無線技術を活用した防衛ロボットも共同で開発していく。5Gの特徴である大容量で低遅延はリアルタイムでのリモートからの偵察や攻撃に適している。

 アメリカ国防総省も今年に入ってから5Gネットワークを活用して兵器の自律化を促進していくことを発表していた。実際に3D(Dangerous:危険、Dirty:汚い、Dull:退屈)な業務は人間の兵士よりもロボットの方が適しており、リアルタイムに遠隔地から人間が監視して操作や攻撃などの指令を行う場合は遅延の少ない5Gの方が効率的で精確だ。一方で、自律化された兵器が人間の判断を介さないで兵器自身が標的を判断して攻撃し、相手を殺傷してしまう「キラーロボット」と称される自律型殺傷兵器の開発にもつながる。

 ハンファは「過去数年にわたってハンファは多目的の無人兵器の開発と試験に成功してきました。昨年、我々は様々な自律型兵器の開発においても競争力があることが証明されてきました。5Gネットワークとソリューションを活用することによって、ハンファが開発するリモートで操作する無人兵器や自律型兵器もこれまで以上に効率的に運用ができるでしょう。兵器の遠隔操作と自律型兵器を可能にするロボットプラットフォームの機能がますます広がります」と声明を出している。5G技術を活用した兵器開発によって人間が戦場に行かないで遠隔地からの無人機や自律型兵器による攻撃や防衛を行えるようになることは北朝鮮への抑止にもなる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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