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86歳のソフィア・ローレン 11年ぶりにホロコースト生存者役でNetflixの新作ドラマに出演

佐藤仁学術研究員・著述家
ソフィア・ローレン(写真:REX/アフロ)

 イタリアの大女優で86歳のソフィア・ローレンが11年ぶりに新作ドラマに出演する。新作は2020年11月からNetflix(ネットフリックス)で配信されるドラマ『The Life Ahead』で、ホロコーストを生き延びたユダヤ人女性の元娼婦マダム・ローザを演じる。息子のエドアルド・ポンティ氏が監督を務める。そのドラマのオフィシャルトレーラーが10月21日に公開された。

▼The Life Ahead | Official Trailer (Netflix)

 第二次大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。終戦後から現在に至るまで、欧米では毎年ホロコーストをテーマにした映画やテレビドラマが制作されており、世界中で多くの人に視聴されている。日本人には馴染みのないホロコーストだが、それでも日本でも多くの映画が公開されてきて、多くの日本人にも視聴されてきた。ホロコーストをテーマにした映画やドラマは、実際のホロコーストを経験した人の実話や歴史などを元に制作される「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」に代表されるノンフィクション系と、創作や小説を元に制作される「ライフ・イズ・ビューティフル」に代表されるフィクション系がある。「The Life Ahead」はロマン・ガリー(エミール・アジャール名義)の小説「La vie devant soi(これからの人生)」を元にしており1977年にも映画化されている。ソフィア・ローレンが演じるマダム・ローザがホロコースト生存者であるが、他のホロコーストを扱った作品のような生々しさはなさそうだ。

 今回の『The Life Ahead』は日本のNetflixでの配信は明らかにされていないが、Netflixやアマゾンプライムなどの動画配信サービスでもホロコーストをテーマにした多くのオリジナル作品が制作、配信されている。また過去のホロコーストを扱った映画も多数配信している。映画館で上映する映画よりもネットでの動画配信なので世界中の多くの人にリーチしやすくなっており、映画よりも多くの人に視聴されている作品もある。今回のNetflixでの新作ドラマもソフィア・ローレンが11年ぶりに出演するということで話題になっている。また1934年にイタリアで生まれたソフィア・ローレンはイタリアを含むヨーロッパでユダヤ人が差別・迫害され、周囲のユダヤ人が収容所に移送されていくことを実際に見ていたホロコーストの時代を知っている最後の世代だ。

 第二次世界大戦が終了し、70年以上が経過しホロコースト生存者も減少している。欧米やイスラエルではホロコースト生存者らの証言などを収録して動画やホログラムなどで保存し、世界中に公開して、ホロコーストでの経験を伝えている。ホロコースト生存者が健在のうちに、ホロコーストの記憶のデジタル化を積極的に進めている。それらデジタル化されたコンテンツは欧米やイスラエルでは学校の授業などでも多く活用されている。

 ホロコースト生存者が出演しないで、フィクションであっても彼らの辿って来た人生を俳優が演じて表現するホロコーストをテーマにした映画制作もホロコーストの記憶のデジタル化の1つである。ホロコーストをテーマにした映画は終戦直後から多く制作されてきて、特に冷戦が終結した1990年代以降は1年に1本以上のホロコースト関連の映画が制作され世界中で上映されてきた。日本人には馴染みのないテーマだが、欧米では学校でホロコースト教育を導入しているところも多く、いまだに反ユダヤ主義が根強いことから、ホロコーストはユダヤ人だけでなく欧米やイスラエルの多くの人たちの関心を引き付けるテーマである。そしてここ数年では映画からNetflixやアマゾンプライムなどの動画配信サービスでのオリジナルドラマに移行してきており、映画館での配給と違って世界中の人が簡単にアクセスして視聴できるようになっている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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