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Twitterもホロコースト否定に関する投稿を禁止:Facebookに次いで生存者の要請に応えて

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 Facebookは2020年10月12日にホロコースト否定に関する投稿を一切禁止し、発覚したらすぐに削除することを明らかにした。それに続いて10月14日にはTwitterも同様にホロコースト否定に関する投稿を禁止すると同社のポリシー変更を発表した。第二次世界大戦時にナチス・ドイツが約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。だが現在でも欧米やアラブ諸国では反ユダヤ主義が根強く「ホロコーストはなかった」「ユダヤ人はそんなに殺されていない」といったホロコースト否定論者が多く、そのようなホロコースト否定に関する投稿はネットやSNSにも多く、あっという間に拡散されている。特に若い人たちはSNSでのホロコースト否定の情報を鵜呑みにしてしまう傾向が強い。

 戦後70年以上が経ち、ホロコーストの生存者らも高齢化が進んできているが、世界中のホロコースト生存者が2020年7月に、FacebookのCEOで自身もユダヤ人であるザッカーバーグ氏に対して、ホロコースト否定論に関する投稿を削除するように呼びかけ、キャンペーンを始めた。「#NoDenyingIt」のハッシュタグをつけて、呼びかけていた。ホロコースト生存者は高齢化が進み、ホロコーストを体験した人たちは年々減少している。「ホロコーストは当時、実際にあった」と証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"の投稿や情報が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。そのため高齢のホロコースト生存者らは慣れないSNSを活用して世界中に訴えていた。世界中のユダヤ団体やアウシュビッツ博物館もSNSで呼びかけていた。

 Facebookはそれに応えて2020年10月12日にホロコースト否定に関する投稿を一切禁止することを発表し、Facebookに続いてTwitterもホロコースト否定に関する投稿を一切禁止することを発表した。Twitterは「我々は反ユダヤ主義やヘイトスピーチを強く非難し、そのような投稿を一切禁止します。我々はホロコーストや歴史的な暴力、ジェノサイドに関する暴言や脅迫、差別的言動に対するポリシーを強化していきます」とコメントしていた。

 いまでも世界中で根強い反ユダヤ主義でホロコースト否定や反ユダヤ主義に関するSNSへの投稿は多い。露骨にホロコースト否定や反ユダヤ主義に関する内容であれば、すぐに削除もできる。だが、そのようなわかりやすい投稿はすぐに削除されるので、隠語や仲間内でしかわからないような言葉、新しい表現などで投稿されることも多いので、全てのホロコースト否定の投稿を削除することは難しいだろう。例えば「あんなことはなかった」「あれはフェイクニュースだ」「ユダヤ人のでっち上げだ」といった文脈からでしか推測できないような表現が多い。日本ではあまり馴染みのないテーマだが、数年前にホロコースト否定について取り上げた映画『否定と肯定』が公開されたので観たことがある人もいるだろう。

▼ホロコースト否定について取り上げた映画『否定と肯定』

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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