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香港の化粧品ブランド、アンネ・フランクの名前の商品を販売しネット大炎上で謝罪・削除

佐藤仁学術研究員・著述家
アンネ・フランクの名前をつけた商品(Woke Up Like Thisより)

 香港の化粧品商品ブランドWoke Up Like This (WULT)がアンネ・フランクの名前を使った商品を販売していたが、ネットで大炎上して商品を撤収して謝罪した。商品名は「Dream like Anne」(アンネのような夢)と称されていたが、あまりにもの炎上のため謝罪後の現在ではサイトからは削除されている。

アンネ・フランク(アンネ・フランクハウス提供)
アンネ・フランク(アンネ・フランクハウス提供)
「Dream like Anne」(Woke Up Like Thisより)
「Dream like Anne」(Woke Up Like Thisより)

  同社では「アンネ・フランクの功績を讃えて、将来の世代への希望を込めて、この名前を付けましたが、多くの方々を傷つけてしまったことを陳謝申し上げます。私たちは現在の新型コロナウィルス感染拡大の世の中で、少しでも未来に対してポジティブなエネルギーと希望を届けようと思って名付けましたが、浅はかでした。決してアンネ・フランクやホロコーストの犠牲者を侮蔑して名付けたわけではございません。最大の敬意を払っていましたが、人類史上最大級の悲劇の歴史であるホロコーストから利益を得ようとして大変申し訳ございません」と謝罪文を発表。決してホロコースト犠牲者やアンネ・フランクを軽んじていたわけではなかったと釈明していた。

 第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスからの迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。

 ホロコーストやナチスドイツに関するファッションや商品は販売されると必ず炎上する。ユダヤ人が収容所で着ていた囚人服に似ていたり、ユダヤ人が差別されるために着用を義務付けられた黄色のダビデの星をつけた服など露骨なファッションもある。そのような商品は「ホロコーストの犠牲者に対する敬意がない」「生存者や家族が見たら、どのような思いをするのか考えよう」と毎回炎上する。また露骨な反ユダヤ的なファッションについては世界中のユダヤ団体やホロコースト博物館、著名人らも反対や商品の撤収をSNSで呼びかけることから、いっそう話題になる。今回もユダヤ人作家のベン・フリーマンが自身のツイッターで「殺害されていったユダヤ人をマーケティング目的で利用すべきではない」と抗議していた。だが、それでも懲りずにこのようなアンネ・フランクの名前をつけた商品が登場する。毎回「ホロコースト関連の商品を販売する」→「ネットで炎上し、拡散される」→「商品を撤収したり、謝罪する」の繰り返しで、もう欧米では過去に何回もあった。

 一方で、ホロコーストをテーマにしたファッションは、必ず炎上するので、それによって拡散し、話題になるので知名度を高めたり、サイト内の他の商品を見てもらおうとマーケティング目的で行うケースもある。どれだけネットで叩かれて炎上しても、商品を撤収しないで販売を続けることもある。今回の香港の化粧品メーカーは、新型コロナウィルス感染拡大の中、少しでも未来に対して希望を持ってもらおうという意図で、ナチスに抵抗していたアンネ・フランクの名前を商品に冠したようだが、その意図は伝わらなかった。「アンネ・フランクやホロコーストをマーケティングに利用して利益を得るのはけしからん」と炎上してしまい、商品をサイトから撤収することになった。

▼今回の商品に対して怒りを表明するベン・フリーマンのツイッター

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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