Yahoo!ニュース

米国防総省主催「AlphaDogfight」AIが人間パイロットに空中戦シミュレーションで圧勝

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

AIと人間のパイロットが将来の空中戦のベストコンビ

 2020年8月に米国国防総省傘下の国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)がAI(人工知能)パイロットと人間のパイロットが空中戦でシミュレーション対決する「AlphaDogfight」コンテストが開催し、5対0でAIパイロットが圧勝した。

 国防総省のマーク・ルイス氏は今回のAIパイロットが圧勝したことについて「人間のパイロットが不要になったわけではないです。これからはAIと連携しながらも、人間の判断が求められるシーンでは人間が判断することによって効率的な運用ができるようになります。AIパイロットは人間のパイロットと違って自己保身的にならないことが強みです。AIと人間パイロットが連携して操縦することが未来の戦場でのベストコンビだと確信しています」と語っていた。DARPAのスポークスマンのジェルク・アダムス氏は「どのレベルの操縦をAIが担当して、どのレベルになったら人間のパイロットが操縦を担当するのかフレームワークを決めていくことがこれから重要になっていきます。人間のパイロットは複雑な操縦シナリオでもAIパイロットを信用する必要があります」とコメントしていた。

殺傷攻撃の判断は人間パイロット

 軍事分野でのAI活用は進んでいる。一方で人間の判断を介さないでAIが標的を判断して人間を殺傷する自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)は非倫理的、非道徳的であるとNGOが開発に反対を表明している。だが人間が攻撃の判断をしても誤爆してしまうことも多い。AIによる精緻な顔認識機能の方が精確に標的を検知し、殺傷の判断に対して人間のような悩みや迷いはない。

 AIと人間パイロットによる組み合わせがベストだとDARPAは主張しているが、最終的な攻撃判断は人間が行う。マーク・エスパー国防長官は「アメリカでは人間の殺傷に関わる攻撃に関してはAIに任せないで、人間の判断が入ります。決してAIにとって代わられることはありません。AIが攻撃の判断をするポイントまで来ていますが、AIは時間や人的リソースを補うのに役立つツールだと理解しています」と語っていた。中国やロシアでもAIを活用した自律型兵器の開発は進められているが、エスパー国防長官は「中国は殺傷能力を搭載した自律型ドローンや次世代ステルスUAVを開発しており、それらを世界中に販売しようとしています」と懸念を表明していた。

▼DARPAが公開している「AlphaDogfight」コンテストの動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事