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元イギリス陸軍将校「AIが軍事近代化の中心になる」台頭するロシアと中国の脅威も懸念

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 イギリス軍の元陸軍将校のリチャード・バロンズ氏が「イギリス軍はいまだに、戦い方が過去と変わっていない。そんなことではイギリスを守ることもできないし、21世紀社会の多くの危機的な状況に対応することができない。150年に一度の大転換期にあり、AIを活用した兵器やロボットを戦略と軍隊運用の中心に持ってこないといけない」と英国メディアExpressで語っていた。バロンズ氏はさらに「防衛省もそれは理解しているはずだが、この大変革に向けてドライブできるだけの政治的な意志がイギリスにはない」とコメント。

「AIこそがイギリスを救ってくれる」

 「AIやロボットの軍事活用による革命は、政府や軍だけでなく、学術界や産業界、さらには市民社会の支援と理解も必要だ。現在の軍の体制は効果的な運用をするには小さすぎる。これでは台頭してくる中国やロシアの脅威に対抗できない。2010年から世界情勢は大きく変化した。ロシアは再び大国として台頭してきたし、中国の軍事技術力は強化されてきており、両国の脅威は増大している。我々が現在生活しているのは、潜在的な危険性に満ち溢れた世界だ。特に中国の経済的な台頭と第4の革命と言われるAIを活用した軍事力の増強は脅威である。AIは軍事分野だけでなく、既に経済や市民生活では多いに活用されている。これからも西側世界が構築してきた国際秩序が維持されるかどうかは誰にもわからない。1つの国の経済的な発展が、別の国にとっては破壊にもなりかねない」と語った。

 そして「AIこそが国防と安全保障の近代化にとって中心になる。実際にそうなっているし、今後もAIが軍の中心になるのは変わらない。これからはAIと人間の軍人による"ハイブリッドアーミー"にシフトしていく。AIこそがイギリスを救ってくれる」と付け加えていた。2019年12月には、イギリス軍のニック・カーター将校は「軍の近代化はAIだけでなく、様々な情報通信技術の組み合わせと応用が必要になってくる」と語っていた。

 軍事分野でのAIの活用はイギリスだけでなく、バロンズ氏が脅威と名指しした中国やロシアでも進められている。アメリカ軍も先日、初の殺傷型AI兵器をテスト中であることを明らかに した。新たな科学技術の軍事での応用は避けられないことだし、そのようにして軍事技術は発展してきた。実際に、AIを搭載したロボットは3D業務(危険:Dangerous、汚い:Dirty、退屈な:Dull)には、人間よりも適しており、既に多くの分野で活用されてきている。だが一報で、AIの軍事分野での活用については、AIを搭載した兵器が、人間の判断を介さないで標的や敵を攻撃してくる自律型殺傷兵器の登場が懸念されている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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