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Google「イギリスのシンドラー」ニコラス・ウィントン氏 111回目の誕生日を祝してDoodleに

佐藤仁学術研究員・著述家
ニコラス・ウィントン氏(写真:ロイター/アフロ)

 Googleでは検索サイトのロゴを祝日や記念日、有名人の生誕などを祝うために独自のデザインでアレンジしている、いわゆるDoodle(ドゥードゥル)が日本でもお馴染みだ。5月19日はニコラス・ウィントン氏の111回目の誕生日を祝したDoodleが掲載されている。

ニコラス・ウィントン氏のDoodle(Google)
ニコラス・ウィントン氏のDoodle(Google)

 ニコラス・ウィントン氏といっても日本では全く知らない人の方が多いかもしれない。1909年5月19日にイギリスで生まれたニコラス・ウィントン氏は第2次大戦がはじまる直前の1938年から1939年にチェコのプラハでナチスドイツによる占領でユダヤ人の差別と迫害、いわゆるホロコーストによって強制収容所に移送されそうになっていた子供たち669人を救出してイギリスに避難させた人物。子供たちの大量輸送で「キンダー・トランスポート」と呼ばれており、1939年3月に第1弾の子供たちがイギリスに避難。1939年9月1日に第2次大戦が勃発すると、ユダヤ人の子供たちの脱出は不可能となってしまい、逃れることができなかった約6000人以上の子供たちはテレジエンシュタットのゲットーを経由してアウシュビッツなど絶滅収容所で殺害されてしまった。

 1988年にニコラス・ウィントン氏の妻が当時のスクラップブックを発見して、彼の功績に注目が集まった。その後、イギリスのテレビ番組の企画で彼が救った子供たちと再会を果たしている。

 GoogleのDoodleはイギリスの駅に到着した時のユダヤ人の子供たちの様子を描いたもの。ニコラス・ウィントン氏は「イギリスのシンドラー」と称されることもあり、救出された子供には映画監督のカレル・ライス氏らもいる。過去に映画やドキュメンタリー番組などでも多く取り上げられ、欧州では有名な存在。

▼ニコラス・ウィントン氏が死去した際に彼の功績を伝えるBBC(2015年7月2日)

▼ニコラス・ウィントン氏の生涯を描いたドキュメンタリー「ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち」オフィシャルトレーラー(2013年)

▼BBC製作「Kindertransport: A Journey to Life」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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