ドイツ・メルケル政権、自律型殺傷兵器開発反対を棄却「軍事でのAI活用はオープンに」
ドイツのメルケル連立政権は2020年1月に、緑の党や左翼党など野党が提出した「自律型殺傷兵器開発の反対」に関する法案を棄却した。自律型殺傷兵器はLAWS(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)またはキラーロボットと称され、人間による判断を介さないでAI(人工知能)を搭載した兵器が標的を判断して攻撃を行う。人間を介さないで標的を攻撃し、殺しかねないことから倫理的観点、道徳的観点からNGOなども自律型殺傷兵器の開発には反対している。左翼党のカトリン・フォーグラー議員は「自律型殺傷兵器の開発は恐ろしいビジョンであり、ロボットや兵器が人間の判断を介さないで、兵器自らの判断で効率的に攻撃を行うことは脅威であり、しかもこのシナリオは非常に具体的になってきている」と警鐘を鳴らしている。
メルケル政権は軍事分野でのAIの活用はオープンであるべきだと主張。軍事分野におけるAIの活用と開発はドイツだけでなく、世界規模で進んでいる。特にAIを搭載したロボットの方が人間よりも3D(Dirty:汚い、Dangerous:危険、Dull:退屈)業務は適している。人間の軍人では行えないような緻密で精確な作業も期待されている。さらに政権では自律型殺傷兵器の開発禁止については、パブリック・ヒアリングが重要であり、性急な判断をすべきではないとも主張。ドイツでは自律型殺傷兵器の議論は活発に行われている。また別の動きとして、ドイツは自律型殺傷兵器の開発は全て終えていると野党は主張しているが、政権は否定している。
ノーベル平和賞受賞者のジョディ・ウィリアムズ氏は2019年に、"今後3年から4年で自律型殺傷兵器を開発することが可能であろう"と予測し、自律型殺傷兵器の開発反対の国際的なキャンペーンをベルリンで行った。その時、ドイツ外相のハイコ・マース氏は国際的な開発禁止よりも、まずは法的拘束力のない自律型殺傷兵器開発反対の宣言が重要であると主張していた。