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ケリー元国務長官・カーター元国防長官、キラーロボットの登場には懐疑的「AIが戦争を支配しない」

佐藤仁学術研究員・著述家
カーター元国防長官(左)とケリー元国務長官(右)(写真:ロイター/アフロ)

 2004年大統領選挙の民主党の大統領候補で元米国務長官だったケリー氏と元米国防長官だったアシュトン・カーター氏が2019年9月にペンシルバニア大学で開催された「2019 Global Order Colloquium」において、自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)について語った。

 今年のペンシルバニア大学の「2019 Global Order Colloquium」の副題は「新たな技術が国際秩序をどのように書き換えるか(How Emerging Technologies are Rewiring the Global Order)」だった。

 LAWSはキラーロボットとも称されており、AI(人工知能)の発展によって、人間の判断を介さないで、AIを搭載したキラーロボットや兵器自身が判断して人間や標的を攻撃してくるもので、国際社会でも懸念されている。キラーロボット開発には多くのNGOや著名人も、人間を介さないでロボットが自身の判断で人を攻撃し殺害するかもしれないという倫理面から反対している。

「キラーロボットが登場するシナリオをアメリカ人は受け入れない」

 アシュトン・カーター元国防長官は「完全な自律型殺傷兵器やキラーロボットの登場は非現実的でリアリティがない」と語り「我々はキラーロボットに対して、誰も責任を取らなくて良いということはない。人間が判断に関与しないで標的を探し出して、攻撃するような自律型殺傷兵器やキラーロボットが登場するというシナリオをアメリカ人が受け入れるはずがない」とコメント。

 ケリー元国務長官も、カーター氏と同様に自律型殺傷兵器やキラーロボットの開発と登場に対しては懐疑的な態度を表明。「AIに戦争を支配されるようになることはない。AIを搭載したロボット自身が判断して標的を攻撃するようなことがすぐに起きるとは考えにくい」と語っていた。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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