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インド国防大臣、あらゆる軍事分野でAI活用を強調:懸念されるキラーロボット

佐藤仁学術研究員・著述家
Rajnath Singh氏(写真:ロイター/アフロ)

「人間こそが軍の中心」

 インドの国防大臣のRajnath Singh氏が2019年9月、インドの将来の軍事・防衛にはあらゆる面においてAI(人工知能)技術の導入と活用が必要であることを強調した。大臣が軍の幹部150人以上を集めた会議で述べたとIndia Todayなど地元紙が報じている。Rajnath Singh氏は「最終的な攻撃の判断はAIではなく、軍の人間が行うべきだ。人間こそが軍の心臓であり精神であり中心だ。人間が手と足だけになってはいけない」とAIによる判断での攻撃が行われないことを述べた。また2024年までにはAI技術を搭載した25種類の軍事・防衛システムを開発することを明らかにした。

懸念されるキラーロボット

 インドだけでなく世界中の軍でAIの活用と導入に向けた動くは加速している。一方で、キラーロボットと称される「自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)」の開発と出現が懸念されている。キラーロボットが自ら判断して、自らの意志で人間を含む標的に攻撃をしかけてくることへの脅威に多くの国やNGOらが反対を表明しており、国際社会でも議論になっている。インドはIT技術に強く、13億人の人口を抱えるインドではAI技術を強化するための様々なデータや情報も収集しやすく、AI分野でも秀でている。そのため特にインドの隣国で、対立関係にあるパキスタンはLAWS開発と出現に強く反対している。

 インド軍の南西コマンド(South Western Command)の将官のAlok Kler氏は2091年9月にTimes Of Indiaのインタビューで「中国軍は軍事分野でのAIの活用を広く進めており、インドはかなり遅れを取っている」と中国軍への警戒を見せた。

 続けて「しかし、インドには優れたIT技術があるので、中国軍にキャッチアップすることは可能だ。我々の目的はAIを活用することによって、戦場での戦いを効率的にしていくことだ。キラーロボットによる戦争が生じるようになるのは、ずっと先の将来のことであり、まずは攻撃や防衛の意思決定を迅速に行うための支援としてAIを活用していく。レーダーやドローン、通信衛星などから多くの情報やデータが収集されているが、AIが人間の脳のように判断していくことは現時点では不可能で、あくまでも人間が正しい判断をするための支援にAIを活用していく」とコメントしている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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