クロアチアとイスラエル:サイバーセキュリティで協力「歴史的な合意」
クロアチアとイスラエルはサイバーセキュリティ分野で連携をしていくことを明らかにした。イスラエル内務省のサイバーテクノロジー部門のチーフエグゼクティブディレクターのYigal Unna氏とクロアチア内務大臣のDavor Bozinovic氏が2019年9月にテルアビブで調印。
「今回の協力は両国にとって大きな一歩」
Unna氏(イスラエル)は「サイバー攻撃は世界共通の脅威であり、共通の価値観を持つ全ての国との協力は必須。クロアチアとのサイバーセキュリティ分野での協力は"歴史的な合意"だ。両国での連携は、2か国のサイバー攻撃への対応だけでなく、欧州全体のサイバー防衛にも貢献していきたい」と語っている。
Bozinovic氏(クロアチア)は「我々の生活はますますデジタル社会に移行しており、サイバー攻撃の脅威は高まっており、サイバーセキュリティは非常に重要。世界でもサイバーセキュリティ分野で最高クラスのイスラエルと連携できることは有益。今回のサイバーセキュリティ分野での協力は両国にとって、非常に大きな一歩であり、素晴らしいこと。これからはサイバーセキュリティ分野だけでなく、両国の利益のために協力関係を強化していきたい」と語っている。
イスラエルはサイバーセキュリティが圧倒的に強い国だ。8200部隊という軍のサイバーセキュリティを担う部署で経験を積んだ人らが、多くのサイバーセキュリティに関するスタートアップを起業しており、サイバーセキュリティ産業も活発だ。イスラエルとクロアチアではサイバーセキュリティ分野においては、圧倒的にイスラエルの方が優位で強い。イスラエルは周辺諸国や世界中の反ユダヤ主義国からのサイバー攻撃の標的にされているので、サイバー防衛も強化しており、システムの脆弱性や新たな攻撃手法に関する情報を多く抱えている。そのためイスラエルとサイバーセキュリティ分野で協力関係を構築することは多くの情報を入手しやすくなる。
ホロコースト時代のクロアチアでのユダヤ人
今回、イスラエルとクロアチア両国でのサイバーセキュリティ分野での連携を「歴史的な合意」とイスラエルが語っていたが、イスラエルとクロアチアにはホロコースト時代の複雑な歴史がある。
1941年4月にユーゴスラビアがドイツに占領され、クロアチアが独立すると、親ナチスのウスタシャに支配され、すぐにユダヤ人迫害が始まった。シナゴーグに放火し、ユダヤ人墓地を破壊したり、ユダヤ人の資産を掠奪し、ユダヤ人社会に罰金を科した。医者、教員などクロアチアの社会に貢献してきたユダヤ人も殺された。ユダヤ人は公的機関から排除され、黄色のバッチ着用を義務付けられた。1941年5月には、ダニツァにクロアチア初の強制収容所が設置され、その後、「バルカンのアウシュビッツ」と言われたヤセノヴァッツ、グラディシュカ、ロボルグラード、ジャコヴにも収容所が作られ、6000人を超えるユダヤ人が収容所に送られ全員が殺された。1942年末までに2万人以上のユダヤ人が収容所へ移送され、餓死、射殺や撲殺によってほとんどが死滅した。生き残っていたのは数百人だけだった。
このように複雑な歴史的背景と民族感情を抱えているイスラエルとクロアチアだが、サイバーセキュリティ分野では連携していこうとしており、両国にとっては「歴史的な合意」なのだ。