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SNSで「反ユダヤ主義、ネオナチ、ホロコースト否定」を投稿している97%が30歳以上

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

1200万件以上の投稿を解析、30歳以下の投稿は2.7%のみ

 米国のスタートアップ企業Vocativが欧米12カ国のソーシャルメディア上で反ユダヤ主義、ネオナチ、ホロコースト否定(ユダヤ人大量虐殺のホロコーストはなかったという主張)に関する投稿がどのくらいあり、どのような属性の人が投稿しているのかを分析した。

 同社では欧米12カ国のソーシャルメディア上で反ユダヤ主義、ネオナチ、ホロコースト否定に関する12,778,533件の投稿を分析。そのうち30歳以下の人が投稿しているのは 347,485件(約2.7%)のみだった。SNSで反ユダヤ主義やホロコースト否定について投稿しているのは若者でなくて、30歳以上の大人であることがわかった。

過半数がアメリカからの投稿

 欧米12各国のうち、SNSで反ユダヤ主義、ネオナチ、ホロコースト否定についての投稿を国別で見ると、過半数の59%がアメリカからの投稿、次いでイギリス(11%)、ドイツ(8%)だった。またSNSで反ユダヤ主義、ネオナチ、ホロコースト否定について投稿している若者のうち女性は39%のみで、男性の方が多かった。

「若者はホロコーストについてほとんど知らない」

 Vocativ創設者のMati Kochavi氏は「最近の若者はホロコーストについてはほとんど知らないのだろう。ホロコースト経験者も年々減少しており、ホロコーストに接する機会も減っている。ホロコーストの経験者の記憶を保持して若者の世代にも引き継いでいくことが何よりも重要になるだろう」と語り、若者がSNSでホロコースト否定に関する投稿をしないことよりも、ホロコーストのことをほとんど知らないことに懸念を示している。

 欧州の多くの国ではホロコースト否定やネオナチに関する言動は犯罪になる。日本ではあまり見かけることはないかもしれないが、欧米では反ユダヤ主義が今でも蔓延っており、SNSにおいてもそのような過激な投稿や発言が後を絶たない。一方で、今回の調査では、それらの投稿のほとんどが30歳以上であり、若者の投稿はほとんどないという結果が出た。現在の若者が大人になった時にSNSで「反ユダヤ主義、ネオナチ、ホロコースト否定」についての投稿や発言は無くなっているのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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