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ユニセフ、児童婚絶滅に向けたSNSキャンペーン:世界の女性の5人に1人が児童婚

佐藤仁学術研究員・著述家
(UNICEF提供)

 ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)では「子どもの花嫁」に関する10の事実を発表。「#EndChildMarriage」のハッシュタグをSNSでつけて「子どもの花嫁」に反対するキャンペーンを行い、世界中に呼びかけている。

「2030年までに児童婚を終わらせる」

 女子が児童婚を強いられると、学校教育を修了する可能性は減少、家庭内で暴力を受ける可能性が高まる。若いうちに妊娠する可能性が高く、10代の女の子は20代の女性よりも、妊娠中および出産時の合併症で命を落とす可能性が高い。社会的な影響も大きく、世代間を超えた貧困の連鎖に陥るリスクも高まる。

 世界的には児童婚の発生率は減少傾向にあるが、まだ世界中の多くの場所で、児童婚の慣習は残っている。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットでもある、2030年までにこの慣習を終わらせようとユニセフらは努力している。現在のままでは2030年までに1億5000万人以上の女の子が18歳の誕生日を迎える前に結婚することになる。

 ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォア氏は「世界の何百万人もの女の子にとって、結婚は自らの選択ではなく、子ども時代と未来を奪う望まれないものです。解決策は簡単。児童婚を禁止し、教育に投資し、若者、家族やコミュニティが前向きな変化を起こせるようにエンパワーすること。この悲惨な慣習を2030年までに終わらせ、リスクに晒されている1億5000万人の女の子を守ることができる」とコメント。

▼ユニセフ・バングラディッシュ事務所では、「世界規模では児童婚は減少しているのに、バングラディッシュでは増加している」と訴えている。

子どもの花嫁に関する10の事実(ユニセフ発表)

1.世界では、約6億5000万人の女の子と女性が18歳の誕生日を迎える前に結婚している。

2.世界で子どものうちに結婚する女の子の数は年間約1200万人。

3.世界の子どもの花嫁のうち、南アジアが占める割合は40%以上(2億8500万人、世界合計の44%)と最も高く、次に高いのはサハラ以南のアフリカ(1億1500万人、世界合計の18%)。

4.世界の児童婚の割合は減少している。世界全体では18歳未満で結婚した女性の割合はこの10年間で15%減少。4人に1人(25%)から、約5人に1人(21%)となり、約2500万の児童婚が防げた。女の子の就学率の向上、政府による積極的な青少年期の女性への投資、そして児童婚の違法性やその弊害に関する強力な広報活動が、この改善につながった。

5.南アジア地域では、子どもの花嫁の割合は10年前の約50%から今の30%へと3分の1以上減少。大きな要因はインドにおける児童婚の発生を大幅に縮小したこと。

6.世界で児童婚の被害を受ける地域は南アジア地域から、サハラ以南のアフリカに移っている。世界の子どもの花嫁のうちサハラ以南のアフリカが占める割合は、25年前は7人に1人でしたが、現在では3人に1人となっている。

7.ラテンアメリカとカリブ海諸国地域の児童婚の割合は、25年前と同じ高さで全く改善が見られない。

8.児童婚は先進国でも起こる。米国では全50州のうち半数を超える州の法律に18歳未満の子どもの結婚を認める例外がある。EUでは、2017年現在、18歳を結婚できる最少年齢と定めた法律に例外を認めていないのは4カ国だけ。

9.子どものうちに結婚することは、女の子の生涯の様々な側面に負の影響を与える。例えばエチオピアでは、子どものうちに結婚した女性の多くは20歳を迎える前に子どもを出産。そうした子どもの花嫁は妊娠中および出産に際して技術を伴うケアを受ける可能性が低い。さらに、エチオピアで若く結婚した女の子が学校に通えない可能性は、結婚していない女の子に比べて3倍。

10.持続可能な開発目標のターゲットでもある、2030年までにこの慣習を終わらせるためには、この10年間の前進の12倍の速度が必要。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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