イスラエルのヤドバシェム、ホロコースト時代の手紙をデジタル保存しオンラインで公開

(Yad Vashem提供)

 第2次大戦時にナチスドイツがユダヤ人ら約600万人を殺害したホロコースト。当時、迫害されたユダヤ人らが家族や友人に残した手紙がイスラエルのヤドバシェム(国立のホロコースト博物館)によってデジタル化され、ネットで公開している。デジタル版での展示のタイトルは「Last Letters From The Holocaust: 1943:I Left Everyone At Home」。

 ホロコースト生存者らが当時の手紙のコピーなどをヤドバシェムに寄付。当時の紙は劣化が進んでいるため、デジタル技術で読み取れるようにしたものもあり、ネットで全世界に公開。10人の手紙がデジタル化され、手紙の送り主や受取人のエピソードとともに公開されている。

 手紙の受取人の1人のBetty Kazin Rosenbaum氏は76歳。当時2歳でアムステルダムにいたBetty氏はキリスト教徒の家庭に養子にもらわれたため、ホロコーストの犠牲にならずにすんだが、両親と生まれたばかりの弟は密告されて強制収容所に送られた。1943年にBetty氏の母親はポーランド東部のソビブル強制収容所に送られて殺されたが、オランダ語で直筆でBetty氏に書かれた手紙は残っている。彼女の母親は移送される電車の中で、Betty氏にあてて手紙を書いたが、その手紙を誰がBetty氏に送ってくれたのかは、今でもわからない。Betty氏は母親からの手紙のコピーをヤドバシェムに寄付。デジタル化され公開されている。

 Betty氏は「母親からの手紙を見ると、いつでも母親がそばにいてくれるような気持ちになれる。いつも母は希望に満ちた手紙を書き、決して諦めなかった」と語っている。現在でも自身の家族の調査を行っており、若い世代に当時の記憶を伝えようとしているBetty氏だが「現在では、誰も戦争の頃のことを私に聞かなくなってきた。そのことが寂しい」とも語っている。

進む記憶と記録のデジタル化

 現在、イスラエルには8万人弱のホロコーストの生存者が生活しているが、彼らも高齢化が進んできている。当時の生存者たちの記憶のデジタル化とともに、多くの遺品や手紙、写真などのデジタル化による保存が進んでいる。Betty氏のように家族が残っていて、誰の手紙や写真なのかがわかるものの方が少ない。当時の多くの手紙や写真は残されることなく、廃棄されてしまった。ユダヤ人が家族に宛てて書いた手紙が届き、それらが現在まで残っている方が貴重だ。そして当時の手紙や写真も、受取人の高齢化が進んだり、亡くなってしまうと、誰がどのような背景で誰に当てて書いた手紙なのかもわからなくなってしまう。当時のことを知っている人が存命のうちにデジタル化して保存し、記憶を残そうとしている。

 ヤドバシェムでデジタル保存を担当しているYona Kobo氏は「当時、手紙を書いた時には、まさか何十年後も経ってから、このようにデジタル化されて全世界に自分の手紙が公開されるなんて、考えてもいなかっただろう」と語っている。

▼「Last Letters From The Holocaust: 1943:I Left Everyone At Home」の紹介動画(ヤドバシェム)