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Google元CEOシュミット氏「中国・ロシアのAI開発はビジネスだけでなく軍事目的を重視」と懸念

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「倫理的な問題にも資金を投入していくべきだ」

 Google元CEOのエリック・シュミット氏は2018年1月にイギリスBBCの放送でブライアン・コックス氏がパーソナリティを務める番組に出演。そこで人工知能(AI)について語った。

 番組内で視聴者から「ロシアのプーチン大統領が昨年『AIの競争に勝った者が世界を制する』という発言をした。また『中国は2024年までにAIの競争で世界をリードしていくことを明らかにしている』これらのロシアと中国のAIに対する姿勢について、どう考えているか教えてほしい」との問い合わせがあった。

 これに対してシュミット氏は「ロシアと中国のAIに対する姿勢をとても心配している。両国のリーダーはAIのビジネスとしての可能性だけでなく、軍事的な利用目的を重視しているからだ。イギリスやアメリカはもっとAIの基礎的な開発だけでなく、倫理的な問題の研究にも資金を投入していくべきだ」とコメント。ロシアと中国のAI開発に対する姿勢に懸念を示した。

 AIを搭載したロボット兵器が新たに開発されたら、それを試しに使ってみようとするから紛争が多発することが危惧されている。またシュミット氏はAIが発展し、自律型兵器ロボットなどが登場し、ロボットが自らの判断で人間を攻撃してくるようなことに対する倫理的な問題解決に向けた取組みの重要性も訴えた。

中国のAI開発にも危惧「国としてAI開発に立ち向わないといけない」

 2017年7月に中国は「AI国家発展戦略」を発表した。中国ではAIの発展段階を3段階に分け、2020年まで、2025年まで、2030年までのロードマップを国家主導で策定。医療など国民生活のインフラや製造業、農業分野でのAI活用だけでなく国防でもAI活用を推進していくことを明らかにしている。

 この時にもシュミット氏はトランプ政権がAI分野への開発投資で中国に遅れを取っていることにも警鐘を鳴らし、新アメリカ安全保障センターの"AIとグローバルセキュリティサミット"で「今後5年間は、まだアメリカがAI分野でリードしていくことができるが、すぐに中国が追いついてくる。政府や民間企業が集結し、アメリカは国としてAI開発に立ち向わないといけない。AIは凄く重要な分野だ」と述べていた。トランプ政権の2018年の基礎研究費は2016年と比べると約13%減少の43億ドル(約4700億円)と報じられている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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