ドローンが撮影したアウシュビッツ強制収容所:2017年は過去最高の210万人が訪問

(写真:Shutterstock/アフロ)

 第2次大戦中にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人やロマを大量虐殺したホロコースト。そのホロコーストの象徴ともいえるアウシュビッツでは110万人以上が殺害された。つまりホロコーストの犠牲者の5~6人に1人がアウシュビッツで殺されたのだ。

2015年にドローンで撮影、1820万回を超える再生

 ナチスがポーランドに設置したアウシュビッツは1月27日に解放された。そのため1月になると欧米のメディアはこぞってアウシュビッツやホロコーストの特集番組を行う。特に2015年は解放70年という節目の年だったことから世界中のメディアが特集をしていた。その中でも一番注目を集めていたのがBBCが作成したドローンによるアウシュビッツ強制収容所の撮影した動画だった。

 アウシュビッツは世界史上最大の絶滅収容所として現在でも「恐怖の残骸」として残存しており、まさに怪物のようである。ドローンによって撮影されYouTubeにアップされた動画はショートバージョンで3年間で1820万回以上も再生されている。昨年も1年間で400万回以上再生されている。ロングバージョンは350万回以上再生されている。

▼1820万回再生されたショートバージョンの動画

「巨大さに言葉も出ない」

 2017年には米国の会社BiG Productionsもドローンでアウシュビッツを空撮した動画を放送で使用する映像の一部として公開した。「アウシュビッツについては多くの本も出ているし、当時の写真もある。だが空撮でアウシュビッツの全体像をとらえることによって、アウシュビッツという殺人工場を知ってもらいたい。その巨大さに言葉も出ない」と同社のディレクターGi Orman氏は語っている。こちらも既に21万回以上再生されている。

2017年は年間210万人がアウシュビッツ訪問、過去最高:ダークツーリズム人気も

 「人間処理工場」の異名を持つアウシュビッツ強制収容所では狂気の大量虐殺計画に沿って、最後の一人まで寸分の狂いもなく機械的に殺害された。絶滅収容所の役割は財産の押収と殺害であり、それらはシステマティックに組織的に行われていた。強制労働や実験への囚人の利用は絶滅への通過点に過ぎなかった。現在でも夥しい数の遺品、収容者の頭からそり落とした大量の頭髪、ガス室、バラックの跡などが展示されており、アウシュビッツで起こったことに疑いの余地はない。この「地獄の跡地」は世界史上における1つの警告の碑である。

 最近では世界規模で戦争跡地などを訪問する「ダークツーリズム」の人気もあり、アウシュビッツの訪問者も増えている。ドローンの撮影は観光客が来る前の早朝に行われた。そのため、誰も人がおらず無機質な印象を与えるが、昼間は世界中からの観光客で溢れている。アウシュビッツ絶滅収容所に2017年の1年間に世界中から210万人が訪問した。前年よりも5万人も増加し過去最高の訪問者数になったと2018年1月に発表された。訪問者の国別ではポーランドが49.8万人、イギリス33.9万人、アメリカ18.3万人、イタリア人11.5万人、スペイン人10.1万人、ドイツ8.3万人、イスラエル7.4万人、フランス人7.4万人だった。アウシュビッツのサイトも昨年のアクセスは3300万回を超えた。

ホロコーストを後世に、進むデジタルの活用

 アウシュビッツのガス室から生還した人は一人もいないが、アウシュビッツから生還した人は10万人以上もいた。しかし高齢化が進み、強制収容所の地獄の様子を語り継げる人々は年々少なくなってきている。そのような課題を解決するために、人工知能(AI)やホログラフィー技術などデジタルを活用して、ホロコースト生存者らの声を後世に語り継ごうとしている。

 情報発信力があるBBCがドローンを用いて撮影し、現在の全世界にアウシュビッツの様子を発信している。もちろんドローンだけでは、その無機質な跡地からは当時の地獄の様子は伝わらないかもしれない。それでも映像としてアウシュビッツを確認することができる。

 絶滅収容所は訪問して決して気持ち良いものではないし、日本からは不便な場所にあることからアウシュビッツを訪問する日本人は決して多くない。だが、アウシュビッツの現場は「ドローンで撮影された映像をスマホで見る」だけではわからない空気が今でも感じられる。

▼BBC制作のロングバージョンの動画(350万回以上の再生)