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Google、インドで「30ドルスマホ」提供へ:スマホ普及を目指して地場メーカーと提携

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

インドのスマホは平均100米ドルなので、かなり低価格

 GoogleはインドでAndroid Oreo (Go edition)のOSを搭載したスマホを提供していく。インドの地場メーカーMicromaxと提携して、2000ルピー(約30ドル、約3300円)で販売。他にもインドの地場メーカーのIntex、Lava、Karbonnなどが同じくAndroid Oreo(Go edition) を搭載した低価格スマホを開発していくとのこと。インドでは4G対応のスマホは平均すると100ドルなので、30ドルのスマホはかなりの低価格な端末となる。Micromaxの関係者によると「1月末の共和国記念日あたりには販売開始したい」とのこと。

 Android Oreo (Go edition) は2017年5月に開催されたGoogleのイベントGoogle I/Oにて発表されたOSで、スペックの低いスマホでも効率的に作動する軽量型のOS。例えば同OSではアプリの使用ストレージを50%カットできたり、使用するデータ量の節約もできる。

今でも多いフィーチャーフォン利用者、その理由は安さ

 人口13億人をかかえるインドでは1年間にスマホが1億台以上売れる。それでもインドでは今でもスマホよりもフィーチャーフォンの方が売れている。それはフィーチャーフォンの方がスマホよりも圧倒的に価格が安いからだ。フィーチャーフォンの平均価格は新品で30ドルで、他にも大量の中古品が市場に流通している。スマホは新品では平均100ドルだ。そのため、インドにはフィーチャーフォンの所有者が今でも5億人以上いると言われている。

 フィーチャーフォンはいわゆる一般の携帯電話のため、利用のほとんどが音声通話か、ショートメッセージ(SMS)だ。そのためGoogleのサービスの利用は限定されているか、ほとんどない。Googleとしては、この莫大なインドのフィーチャーフォン利用者にスマホに変更してもらい、検索やGメール、YouTubeなどGoogleの提供するサービスを利用してもらうことによって、新たな収益源としたいところだ。

メーカーとしては低価格スマホは儲からない

 Googleは2015年にもインドの地場メーカーMicromax、Karbonn、Spiceと提携して「Android One」を搭載した低価格のスマホの普及を目指していた。当時は、インドの地場メーカーがインドでも人気があった。だが、現在のインド市場ではサムスン(韓国)、シャオミ(中国)、Lenovo(中国)、OPPO(中国)、vivo(中国)と中国メーカーが圧倒的に強い。これらの中国メーカーやサムスンは100ドル程度のスマホを大量に提供している。

 

 低価格のスマホは利益率が高くないので、薄利多売となることから、メーカーにとって「稼げる端末」ではない。低価格のスマホばかりでは事業が成立しない。だが、現在のインドでは地場メーカーのシェアも落ちてきてしまった。それでも地場メーカーも広告や宣伝を行っているのでインドでの知名度は高い。地場メーカーとしても低価格スマホとはいえ、再び市場でのシェア奪回を狙いたいところだ。

▼2017年後半のMaicromaxの動画広告。このスマホは低価格ではない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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