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KLMオランダ航空、SNSからの顧客対応にAIが自動回答:人間は人間にしか対応できない質問に集中へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(KLM提供)

 KLMオランダ航空は以前からソーシャルメディア(SNS)での情報発信や顧客対応に力を入れてきた。Facebook、Messenger、Twitter、YouTube、WhatsApp(LINEのようなサービス)、LinkedIn、ブログ、Instagram、ピンタレスト、さらには中国で大人気のWeChatまで、あらゆるSNSで情報発信や顧客とのコミュニケーションを行っている。

1週間に13万件のSNSからのメッセージ

 そのKLMオランダ航空は2017年12月19日に、SNSにおいて人工知能(AI)を活用した顧客サービスに注力していくことを明らかにした。DigitalGeniusと提携して、よくある質問(FAQ)にはサポートセンターの人間を介さないで、AIが自動的に回答するサービスを提供していく。AIの導入によって、サポートセンターの人間は「人間による回答が必要な質問」に集中できるようになり、効率的な顧客対応が期待できる。Twitter、Messenger、WhatsAppにおいてAIと人間の組み合わせで対応する航空会社はKLMオランダ航空が初となる。

 世界規模でSNSが普及しており、多くの人が電話やメールよりもLINEのようなメッセンジャーやSNSを利用しているが、KLMオランダ航空では1週間に13万件の問い合わせなどのメッセージをSNSで受信している。そして250人の担当者がSNSで毎週3万件の会話に対応している。1つの会話には平均して5つ~6つの質問が含まれており、自動回答が可能な質問は会話での初めに登場するそうだ。

「悪天候時にはフライト情報の問い合わせが急増、AIの支援が必要」

 KLMオランダ航空はDigitalGeniusを1年半前から導入。AIシステムは人間の担当者の回答を学習して成長してきたようで、現在では多くの一般的なよくある質問(FAQ)には自動回答できるようになった。AIは多くのデータや情報を元に学習していき、更に強化されていく。これからは一般的な質問だけでなく、どんどん複雑な質問にも回答できるようになるだろう。ますます人間の担当者は不要になる。これから人間の担当者は、人間が必要な回答に集中できる一方で、従来のように多くの人数も不要になるので、人件費のコスト削減にもつながる。

 KLMオランダ航空のSenior Vice PresidentのPieter Groeneveld氏は「AIを活用することによってKLMオランダ航空では、今まで以上にタイムリーかつ精確に顧客ごとの質問対応ができるようになる。先週オランダでは激しい雪が降り、SNSでの問い合わせが一気に増加した。このような悪天候の時には、顧客からのフライト情報の問い合わせは増えるし、顧客はタイムリーな回答を知りたがっている。AIを活用することによって、多くの質問を短い時間で対応することができるようになる。これこそ顧客が求めていることだ」とコメントしている。

▼KLMオランダ航空のMessengerを活用したフライト情報などのサービスを紹介した動画。

▼KLMオランダ航空ではSNS以外にも、チェックインや機内では「Media App」によるニュース閲覧で新聞の削減などデジタル化に注力している。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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