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誰も得をしない「歩きスマホ」の悲劇

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:アフロ)

 「歩きスマホ」をしていた女性に男性がぶつかって行き、女性が転倒、重症というニュースがあった。下記に引用しておく。

「歩きスマホが悪い」と体当たり、女性が重傷

 兵庫県警葺合署は22日までに、駅のホームでスマートフォンを見ながら歩いていた女性に体当たりして転倒させ、重傷を負わせたとして神戸市灘区篠原中町、作家兼ミュージシャンの中村陽容疑者(63)を傷害の疑いで逮捕した。同署によると、中村容疑者は「スマホを見ているやつが悪い」などと供述しているという。

 逮捕容疑は、19日午後7時35分ごろ、JR三ノ宮駅のホームで同市東灘区の女性(55)とすれ違った際、体当たりして転倒させたとしている。女性は頭を強く打って頭蓋骨(ずがいこつ)骨折の重傷。当時駅には大勢の利用客がいたが、中村容疑者はそのまま立ち去り、同署が目撃情報や防犯カメラから割り出した。

出典:毎日新聞 (2017年7月22日)

誰も得をしない「歩きスマホ」

 駅や街のあらゆるところで「歩きスマホ」をしている。もはや「歩きスマホ」をしていない人の方が少数派になってしまったくらいだ。そして「歩きスマホ」をしない人にとっては、「歩きスマホ」ほど不快でイライラさせるものはない。特に朝の通勤時の駅の階段など混雑しているところでもスマホをチェックしているため、全体の歩くペースが遅くなる。さらに電車の乗降時にも「歩きスマホ」をしている人が多いため、いつまでも電車から降りられない、電車に乗れないことから電車遅延の原因にもなっている。

 今回のようなトラブルも後を絶たない。今回は女性が重傷ということでニュースになったが、駅などでの小競り合いは頻繁にあるようだ。「歩きスマホ」同士の接触トラブルも多い。

 さらに「歩きスマホ」をしている人は視野が狭くなっているにも関わらず『自分だけは大丈夫』『絶対に事故に遭うことはない』と思いこんでいる。そして神経がスマホの世界に集中しているので、障害物や他人にぶつかりそうになっても『自分はスマホのチェックで忙しいのに、どうしてどいてくれないの?』『今、LINEの返事をしているんだから』などと、公共の場にいながらも自己中心的な思考に陥っていることが多い。「歩きスマホ」をしない人にとっては、そのような態度と行動がさらにイライラさせる。このようなことが毎日あらゆるところで繰り広げられている。「歩きスマホ」は誰も得をしない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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