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サウジアラビアの財団、日本のデジハリ、タミヤと連携して人材育成:石油に依存しない経済基盤へ

佐藤仁学術研究員・著述家
ミスク財団提供

サウジアラビア王国ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が設立した 「ミスク財団」は、2017年6月29日、東京でデジタルコンテンツクリエイターに国際的な創造力を育成する教育機関「デジタルハリウッド大学」とプラモデル・模型の総合メーカー「株式会社タミヤ」の2社と覚書(MOU)を締結した。

将来石油に頼らないサウジ経済の基盤として日本に期待

「ミスク財団」は、 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下がサウジアラビアの若者が「ビジネス・文学・文化・科学・技術」のイノベーションと創造性を生み出す非営利組織として2011年に設立。来日した「ミスク財団」事務局長バドル・アル・アサーケル氏は「ミスク財団は、サウジの若者達にグローバルなパートナーシップを通じ様々な分野でイニシアティブを取って、世界の最先端知識と技術を身につけてもらいたい。今回の2組織との覚書は、日本でのスタートであり、今後さらにいくつかの組織とも共同プロジェクトを進めていく。そして同プロジェクトで育成された若者達が将来石油に頼らないサウジ経済の基盤となってほしい」とコメント。

日本のコンテンツ、技術でサウジアラビアの人材育成

デジタルハリウッド大学の吉村毅氏は「デジタルハリウッド大学はアジアにおけるデジタルコンテンツ、デジタルコミュニーケーション教育分野を確立し、未来に貢献できる人材を育成してきました。この度サウジアラビアのエンターテイメント・コンテンツ産業育成に貢献できることをこの上なく光栄に思っております。スタートとしてCG体験授業を現地で実施することになりました。今後はサウジアラビアからの留学生の受け入れも行い、サウジアラビアと一体になりコンテンツ産業を支える人材を育成して参ります」とコメント。サウジアラビアでの人材育成を目指し、現地で体験授業を実施する予定だそうだ。

グローバルに模型やプラモデルを開発・生産・販売するタミヤの代表取締役会長の田宮俊作氏は「サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が同国で 『ものづくり』や若者の能力育成などに注力されており、日本の『ものづくりプログラム』導入の一環として、 大変に光栄にもこの度タミヤの教育プログラムの協力を開始することとなりました。同社はサウジアラビアの次世代を担う子供たちに、このプログラムが浸透してほしいと切に願っております」とコメント。タミヤ製品を使用したサウジアラビアの学校での制作体験を予定しているとのこと。

サウジでも大人気の日本のコンテンツ、親日派の増加も期待

ミスク財団の子会社である「マンガ・プロダクションズ社」CEOブカーリ・イサム氏は「今回の訪問で日本側との調整が進み、今後日本・サウジアラビア共同プロジェクトとしてアニメーション制作やビデオゲームなど開発の方向性が見えてきた」とコメント。マンガ・プロダクションズはサウジアラビアにあるアニメやゲームなどの製作会社。日本のアニメ・ゲーム業界の皆様と共同した作品作りを目指していく。

サウジアラビアでは昔から日本のコンテンツが大人気だ。かつては「キャプテン翼」「名探偵コナン」「ナルト」「ドラゴンボール」、現在では「ワンピース」「進撃の巨人」など日本でもお馴染みのアニメがサウジアラビアでも人気がある。

経済基盤の確立において重要なのはどこの国であっても人材だ。日本のコンテンツ制作技術や「ものづくり」を学んだサウジアラビアの若者が、同国の新たな経済発展を担う日も遠くないだろう。近い将来、石油に依拠しないでもサウジアラビアは「日本に匹敵するアニメやゲームのコンテンツがある国」になっているかもしれない。

またこのような日本の技術を学んだ人たちの多くは親日派として、長く日本を愛してくれる傾向がある。コンテンツ制作や技術の進化は物凄く速く、あっという間に現在の知識は陳腐化してしまうかもしれないが、学習を通じて培った人間同士の関係は長期間にわたって継続される。そのような親日的な若者がサウジアラビアだけでなく、世界中で増えることも期待される。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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